「具合が悪いのか?」
 ふわりとミントの香り。いつの間にかコロンの香りが鼻を掠めるほど近くに、輝二の顔があった。思考が飛び、手が勝手に輝二の頬に伸びる。思った以上に柔らかくて滑らかな肌に、指先を滑らせた。長い黒髪が指に絡む。
「た、くや?」
 藍色が戸惑いに揺れている。互いの呼吸が当たるぐらいに顔が近い。なんだろう、全てがどうでもよくなってきた。掠れた声で俺の名前を紡ぐ唇を塞ぎたい。このまま顔を動かせばそれができる。
「拓也っ、悪ふざけはよせ……!」
「……っ!?」
 肩を強く押されて、ハッと我に返った。瞬間、顔に熱が集中する。俺だけじゃなくて、輝二の顔も赤く見えるのは目の錯覚だろうか?
 沈黙を満たすのはセミの鳴き声だけ。

(……俺は、いま何をしようとした?)
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