風が吹いた。灰色の空から降り注ぐ牡丹雪が風に吹きつけられ、容赦なく俺を襲撃する。
「冷てっ!」
 傘が風に煽られた瞬間、節分の豆くらいの雪がむき出しの顔に当たり、冷たさに思わず声が上がった。
 体感温度はすでに氷点下なんだろうな。冷えて強張った頬に手を当てる。手袋越しに触っても頬の冷たさはよくわからなかった。
 アスファルトの上にうっすら降り積もる新雪をさくさくと踏みしめて足を進めていく。周りを歩く俺とは違う制服を着た高校生たちは、すごく固い表情をしている。今の俺も、きっと同じような表情をしているに違いない。
 そんな高校生たちが、都会の真ん中にある、がっしりとした門の中に吸い込まれていく。門を前にして、俺は足を止めた。中には友人や家族に支えられつつ、今にも逃げ出しそうな危なっかしい足取りで中に入っていく生徒もいる。
気持ちは痛いほどわかるぜ。正直、俺も逃げ出したい、すごく。
 そんなことを思っていたら、学校指定のコートのポケットに突っ込んでいた携帯電話が震えた。取り出して確認すると、一通のメール着信。ディスプレイに表示されていた名前を見て、俺はあわててメールを開く。
 そこに書かれた送り主らしい簡潔な文章に、思わず苦笑いが漏れた。
「落ちてたら承知しない、って……もっと気の利いたことを言ってくれないもんかな」
 それでもメールが来たこと自体嬉しくて、ニヤける顔を、マフラーを引き上げて隠す。
 ここに本人がいたら「だらしない顔するな」って怒られるんだろうな。
 でもさ、試験前日から今まで、直接会うどころかメールすらも送られてこなかったんだ。嬉しいに決まっているだろ。だからこれくらい許してほしい……なんてな。
「うっし、行くか!」
 携帯を閉じ、幾分軽くなった足を前に進め、何度かくぐった門を通り抜ける。
 差していた傘が揺れて、少しだけ積もっていた雪がアスファルトに着地した。
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