それは、きっとお互い様 ―― 拓二 ――

 その噴水の横を通り過ぎようとしたら、ガサリと植木を掻き分ける音がした。同じマンションに住む子供たちがよく遊び場にしているので、その子供かなとは思いつつ、違和感を持った。ただいるだけだったら最初から気づいていたはずだ。それにも関わらず、最初は誰かがいる気配は全く無く、音が聞こえた後も気配が消えている。子供にそんな芸当ができるわけがない。
(泥棒か?)
 ゆっくりと振り返る。緑の植木の向こうに、青い物が見えた。輝二が一歩動くと、植木がガサリと大きく揺れる。
 長い耳がひょっこりと現れた。青銀の綺麗な毛並みをしているそれは、意志をもってピクピクと動いている。
(うさ……ぎ?)
 一般的な兎としては、サイズが些か大きすぎる気がした。どのみち動物だったら放置するのもまずいだろうと、輝二は刺激しないようにじりじりと植木に近づく。
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