――三つの月が重なる日、不思議な出来事が起こる。

 それは古代の出来事を記した書物に書かれていたことだ。
 そんなことを思い出しながら、六枚の翼を持つ天使は空を見上げる。かつてこの世界を救ってくれた子供たち。空はその中の光と闇を受け継いだ、双子と同じ濃紺の色に染まっている。限りなく黒に近いその空のキャンパスを彩るのは、数多もの星々と三つの月だけだ。その三つの月はもうすぐ重なろうとしていた。千年に一度起こると言われている現象だ。
 七色に輝く水晶でできた城のバルコニーから、天使はそんな夜空を見上げていた。光の闘士と言う異名を持つ者と共に。
 強く風が凪いだ。天使の眼前で、長いマフラーが大きく靡いた。三つの月のうちの一つと同じ色をした、限りなく薄い白金の髪が月光を鈍く反射する。顔までをも覆う鎧の下にある、冷たい銀の双眸が細められた。
(彼ほど、月が似合う者は、いないでしょうね)
 ひっそりと、天使はそんなことを思った。そう思えるほどに、どこまでも月のような儚い雰囲気を持っているのだ、この闘士は。
「……俺たちがここに来た時も、月が重なっていた夜だったな」
 ぽつりと、光の闘士は呟いた。それは天使に向かったものではない。離れた場所にいる、別の仲間たちに向けられたであろうことはすぐにわかった。しかし、彼の言葉の意味は分からなかった。前世の自分だったらその言葉の意味は理解できたのかもしれない、そこまで考えて天使は思考を止めた。そんなことは考えるだけ無駄だろう。




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