*ギャグ *歴代5人+光子郎+トーマ+時計屋


 その小さく細い体のどこに、こんな体力をしまっているんだ。
 拓也はマサルと共に、体力が底を尽きかけている啓人の手を引きながら、心中でそう悲鳴を上げる。
「待ってくださいって!どうして逃げるんですか!?」
 全速力で逃げ回っている彼らの背後には、鮮やかなマルーンの双眸をキラキラというよりもギラギラと輝かせながら、パソコンを持って追いかけてくる一人の少年がいる。その好奇心やら探究心やらの知りたい≠ニいう欲求が凝縮されたその瞳は、拓也たちには酷く恐ろしいものにしか見えない。例えるなら、そう、マッドサイエンティスト。
「「その目が怖いんだよぉぉおお!」」
「ひぃぃい!」
 彼らの心には捕まったらバラされる≠ニいう恐怖でいっぱいだ。それほどまでに少年、泉光子郎の目は恐ろしい。究極体と素手で渡り合うチート保持者のマサルでも恐ろしさのあまり顔を青褪めさせている。
 拓也とマサルに半ば引きずられている状態の啓人はすでに半分くらい意識が飛んでいるのではないだろうか。
 かれこれ15分くらいだろうか。4人はさほど広くない部屋の中で中央に置かれたテーブルを盾にしながらぐるぐると追いかけっこを続けている。
「こ、光子郎はん、拓也はんたち嫌がってはりますし……」
「デジモンと合体進化したり、デジモンに進化したり、究極体デジモンと同等の力を持った人間ですよ!? 今調べなくてどうするんですか!? 絶対に大きな発見があるはずです!」
 彼のパートナーであるテントモンは、その迫力に「すみまへん」とすぐに引っ込んでしまった。
 最早、光子郎は目の前の未知を解明することしか頭にない。本来ならば止めるべきである同じ世界から来たという大輔は、止めようと追いかけているうちに早々に体力を使い果たし、部屋の隅でバテている。
「大輔ぇ……大丈夫か?」
「光子郎さんって……こんなに体力あったっけ?」
「一応、この時代にはサッカー部にも入ってますさかい」
 と言っても、光子郎には15分全力で走り続けるような体力なんてないはずだ。しかし、今の彼は年上3人を追いかけまわしていても息一つ乱していない。拓也もサッカー部であり、マサルも超人的な体力をしている。しかし、今は戦闘直後のミーティング中だったという事と恐怖が相まって疲れが出てきている。因みにギルモンは遊んでいると思っているのか、光子郎の後をずっと追いかけている。マサルのアグモンは空腹で動けない。
「いっそ調べてもらった方が戦力強化に役立つのではないのかのぉ」
「適当なこというなぁ!」
「ジジイ絶対にぶっ飛ばす!」
 そしてこれまた本来は止めるべき立場にある時計屋は、そんな彼らを面白がって扉の前でクロックモンと座り込む始末。助ける気はさらさらないようだ。
「……普通の人間で、よかった」
 このカオスな光景に、マサルに付いてきたトーマはぽつりと呟き、トーマのパートナーであるガオモンは黙って頷いた。一般人からするとトーマは天才の部類に入る人間だが、本人は自ら巻き込まれるような愚かなことはしないので黙って傍観に徹している。
「あ、僕、もうだめ……」
「啓人!気をしっかり持て!」
「傷は浅いぞ!」
 とうとう意識が完全に飛ぶ寸前の啓人に、拓也とマサルは悲鳴を上げる。気絶した人間を抱えていけるほど二人に余裕は残っていない。
 万事休すか。
 そう思われたその時、部屋の扉ががちゃりと音をたてて開かれた。扉の前にいた時計屋とクロックモンは揃って開かれた扉にぶつかってもんどり返った。
「あ!わりぃ!……って何してんだ?」
 扉の向こうから現れたのは、アグモンをつれた太一だった。
「「太一(さん)!」」
「たいちさー…ん」
 太一はこの異様な光景に一瞬顔を引き攣らせた。瞬間、拓也とマサルは啓人をつれて助けを求めるように太一の後ろに飛び込んだ。
 すぐに事情を察した太一が光子郎を宥め、ようやくこのカオスは終結した。


未知の探究者
(仲間を怖がらせたら駄目じゃないか)
(? 僕はただ調べようとしただけですよ?)
((あいつ怖い))
(アニキー!腹減ったぁー)


光子郎さんならやりかねないと思った。
20120319

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