*背後注意 *シリアス *闇一


 首の骨が軋み、喉が圧迫される。
 迫る死の恐怖でも与えているのがレーベならば、それもまた愛おしくて、気持ち良くて、仕方ないと思う俺の感覚はおかしいのだろうか?
「れー……べ」
 俺の首を絞める大きな手に、ちっぽけな手を重ねる。引きはがしはしない、ただ添えるだけ。それだけでも微かに手の力が緩んだ気がした。
 中途半端に伸びた白金の髪が頬を掠めてくすぐったい。毛先の方だけ黒髪の名残を残しているそれは、レーベが動くたびにゆらゆらと揺れている。
 今レーベは、もう一つの人格との間でもがき苦しんでいた。
 何が彼をそうしたのかはわからない。ただ彼が俺を殺すことで苦しみから解放されるのなら、命なんて喜んで捧げるよ。
 視界が生理的な涙で滲み始める。その中でもレーベの不吉なほど赤いルビーの瞳はハッキリと見える。瞳孔が開かれたその双眸はまるで獣のようで、このまま僕を食べてくれればいいのになって思った。そうすれば俺はレーベの血肉になってずっと一緒にいられるんだよ。なんて素晴らしいことだろう!
「レ、…ベ」
 頬に触れると、今度は完全に首から手が離れる。消えた圧迫感に、体が勝手に酸素を取り込もうとして深く咳き込んだ。
「こーいち……」
 名前を呼ばれて、咳の反動で跳ねる体を乱暴に押さえつけられる。まだ肺が落ち着かないのに、噛み付くように唇を塞がれて舌がねじ込まれる。
「んっ……ふぅ…っ…」
 舌も唾液も呼吸も声もなにもかも食い尽くそうとするかのようなソレに、感覚が麻痺していく。ただ背筋を駆け上るぞくぞくとした気持ち良さだけはハッキリと残っている。破かれるんじゃないかってぐらい乱暴に服を剥される感覚ですら興奮する材料にすらならない。
 腕を伸ばしてレーベの首に腕を回す。片方の腕が咄嗟に背中に回されたことに、まだ多少は理性が残っているのかと安心した。
 息継ぎも許されないキスに、間もなく酸欠で頭がぼんやりとしてきた。それでも離してほしいとは思えなくて、このまま窒息死するのかななんて笑いながら腕に力を込める。
 意識がだんだん遠のいてきた頃に、やっと唇が開放された。互いを繋ぐ銀の糸も、その先にある赤い舌もすごく卑猥だなぁ。なんて思いながら体は待ってましたとばかりに深く呼吸を繰り返した。
「レー、ベ」
 赤い瞳が揺れる。それが何故か泣いている様にも見えて、俺は首に回したままの腕でレーベの頭を掻き抱いた。
 上がっていく俺の体温と反比例しているかのように、レーベの体温は酷く冷たい。
「輝一……」
「俺は、ここにいるよ」
 瞬間、背中に回された腕が痛いくらいの力で俺を締め付ける。
 理性と本能の狭間でこんなに苦しんでいるなら、いっそ理性なんて全部捨ててしまえばいい。そして俺を壊せばいいのに。
 そう言った所で、優しいレーベは俺を守るために理性を手放そうとしないんだろうな。


優しさが君を苦しめる
(優しい獣はいつか飢えて死ぬ)
(それはお前でも例外ではない)


闇に堕ちかけてる攻めって美味しいよね(きりりっ
20120314

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