*甘甘 *太光


 僕とあの人の歳の差はたった1つ。なのに身長の差は年を重ねるごとに開いていく気がする。普段は対して気にならないその差は、彼と二人の時間を過ごしているときに限って気にしてしまう。
「……楽しいですか?」
 背中に感じるあたたかさに身を委ねつつ、首を回して問いかけてみる。
「何が?」
「男を膝の上に乗せて」
 アウトドア派の太一さんとインドア派の僕では、体格に差がつくのは仕方のないことだとわかっています。恋人同士という関係でこの体勢もおかしくはないのかもしれません。
 ぼやいてみると、斜め上にあるオレンジ交じりの茶色がほんの少しだけ細められる。
「楽しいってより、嬉しいが近いな」
 腹部に回されていた腕に若干力が入り、掠めるようにキスをされる。数秒前よりも近い位置にある顔は柔らかい笑顔を浮かべていて、思わずつられて笑ってしまう。
「光子郎は嫌なのか?」
「いいえ。嫌な訳ではありませんよ」
 むしろ大事にされているようで(実際相当大事にされている自覚はあります)嬉しいです。
「ただ自分が小さいなと思ってしまうだけです」
「そんなこと気にしてるのか」
「僕にとっては結構重要ですよ」
 頭一つ分という身長の差は結構大きいです。太一さんはこのままの僕がいいと言ってくれますが、僕としては不便ですからね。
「不便?」
「僕からキスをする時、いつも太一さんに屈んでもらうじゃないですか」
 太一さんは僕より身長がありますから、不意打ちでさりげなくキスが出来るじゃないですか。何時もしてやられてますので、たまには僕からも不意打ちをしてみたい。なんて思う訳です。屈んでもらうと不意打ちになりそうにないですし、背伸びなんて少し格好悪いじゃないですか。
 冗談交じりに言ってみると、太一さんは声を押し殺して笑う。
「座ってる時とかでもいいんだぞ?」
「何時もこうされていると不意打ちは難しいです」
「それもそうだな。じゃあこの体勢やめるか?」
「それはそれで嫌ですね」
 だって僕だけの特等席ですし。
 そう言うと、今度は声を上げて太一さんは笑った。



小さな幸せの中の、小さな悩み
(どんどん贅沢者になっていきますね)
(それほど幸せだってことだろ)


自分の原点に返ってみようかなと。糖度高めに。
20120308

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