*甘 *マサトマ
人はいずれ死ぬ。どんなに健康であろうと、どんなに強靭な肉体をしていようが死は平等にも不平等にも訪れる。とトーマは言う。
「……君は自分の体を過信しすぎている」
胸から腹にかけての傷に包帯を巻きつつ、トーマはやけに低い声音で説教をしてくる。今日はやけにご立腹だ。
まぁ、前回大怪我してそんな間がなかったからな。当然と言ったら当然か。
「悪かったっての」
「反省してないだろう」
包帯の留め具を引っかけ、背中を叩かれる。傷口に衝撃が響いて声にならない悲鳴が漏れる。わざとやりやがったな。
抗議しようと背後を振り返る。だが、その時に見えたトーマの表情に口を噤む。なんで、んな泣きそうな顔してんだよ。
腕を引いて、トーマを抱きしめる。不意打ちだったから簡単に胸の中に納まってくれた。
「……なにかあってからじゃ、手遅れだ」
「わかってる」
「医師免許を持っていても、死んでからだと何もできない」
「だから悪かったっての」
誰かの命に対して人一倍敏感な奴だから、俺の怪我でも気が気じゃなかったんだろうな。
これからはもう少し怪我には気を付けるか。
そう思いつつ、胸に顔を埋めたままのトーマの頭を知香にしてやるみたいに撫でる。
「お前を置いて行ったりしねぇからよ」
「あたりまえ」
巻かれた包帯に唇を落としてから、トーマは顔を上げる。
「君は僕のものだ」
「そしてお前は俺のもの」
胸なら所有
(お前は俺の物であり、俺はお前の物)
兄貴族初書き
20120226