*甘 *拓二
輝二は意外にもキスが好きだ。とくに唇へのそれが浅い深いに関わらず好きらしい。もちろん人前でしたら全力で殴られるけど、二人きりだったらいくらキスしても怒らない。
まぁ、大体の場合、二人きりでキスしたら俺の理性が持つはずもないけど。
「お前、ほんとにキス好きだよな」
長く深いそれの後に、息を整える輝二に「なんで?」と聞いてみる。
「……なんでだろうな」
輝二は少し考えてみてわからなかったのか首を傾げた。まぁわからなければ仕方ないよな。
行為を勧めようとする俺に、輝二はまたキスを強請る。それに答えながら輝二の後頭部に手を回して、バンダナと髪留めを取り去った。ふわりと揺れる青みがかった黒髪が、白い肌と重なる様は何度見ても飽きない。
邪魔な上着を脱がせて体重をかけて床に押し倒すと、床に髪が広がる。
酸欠でぼんやりとした輝二の表情がいやに色っぽくて眩暈がした。普段は男らしいくせに、こうなるとまるで女みたいだよな。言ったらぶん殴られるだろうけど。
散らばった髪に指を通して感触を楽しむ。
すると輝二は手を伸ばしてきて、俺の帽子とゴーグルを取った。たぶん自分ばかり脱がされてるのが嫌なんだな。
「拓也」
名前を呼ばれて、首に輝二の白い腕が回される。引き寄せられて再び重なる唇が心地いい。
「……今日はやけに強請るな」
「お前がなんでと聞いてきたから答えを探してたんだよ」
キスをすることでそれがわかるんだったらいくらでも付き合ってやりたいけど、そろそろ進めないと限界かも。
「で、答えは見つかりそうか?」
「なんとなくは、わかった」
今度は触れるだけのキスをして、輝二は柔らかく笑った。
「キスが一番お前に愛されてる気がするからだ」
唇なら愛情
(なにその理由、可愛すぎる)
愛情に飢える輝二。
20120226