*ほのぼの甘 *拓一


 微妙に開いた俺と輝一の間にゆるやかな風が吹いた。
 頭上の木ががさがさと葉をこすれさせて揺れている。鳥デジモンが飛び立ったらしき音が遠くから聞えた。
 輝一の手が俺の手に伸ばされる。触れるまでもう少しと言う所で、輝一は手を引っ込める。しばらくして、また伸ばし、また引っ込める。
「……」
「……」
 微妙な沈黙。
 輝一はいつも俺に触れることを戸惑っていた。たぶん今までの罪の意識とかそういったもののせいだと思う。
「どうした?」
「え、あ……なんでもないよ」
 何でもない訳あるか。さっきから俺に手を伸ばしたり引っ込めたりしてるくせに。
「嘘つきだなぁ」
 俺へと伸ばされた輝一の右手は行き場を無くしてゆらゆらしてる。触りたきゃ触れば触ればいいんだ。
 揺れる手をつかんで、空いた手で抱き寄せると、輝一は盛大に肩を引き攣らせた。
「何を怯えているんだか」
「ご、ごめん」
 たぶん輝一のことだからいまだに「こんな罪深い俺が誰かに触れてもいいのかな」とか考えているんだろうな。
 つかんだ手にキスをして、離れないように指を絡める。
「恋人なんだから遠慮しなくていい」
「でも……」
「お前に呑まれることはあっても、闇に呑まれたりはしない」
「っ……!」
 俺は炎だ。光ではないけど、闇を照らすことはできる。
 もっと俺の傍にくればいい、俺に触れればいい。その罪の意識ごとお前を浄化できるはずだから。
「俺は輝一が隣にいてくれればいい」
 もうお前を一人にしたりしないから。一人闇の中で泣かせるようなことはしないから。
「輝一は?」
 瞼にキスをしつつ問いかけると、輝一は泣きそうに顔を歪めてから笑った。
「俺も、隣に拓也がいてほしい」
 言ったな? もうお前が離してほしいって言っても、絶対に離さないからな。
 絡めた手に軽く力を入れて、輝一の瞼にキスをする。
 風は相変わらずゆるやかに流れていた。



絡めた指に愛を誓う
(今、すごく幸せ)
(俺もだ)


瑠伊様へ捧げます!
20120212

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