*教師パロ *マサ拓


 昼休み終了の予鈴が鳴る。
 騒ぐ女子生徒たちが出ていくのとすれ違いで、あいつのテリトリーである科学準備室へと足を踏み入れた。まず視界に入ったのは、備品の小さなソファーに座り疲れたように深く息を吐くこの部屋の主だ。
 また昼休み中女子生徒たちの質問攻めにあっていたのだろう。人気者の先生もお辛いこって。
「よぉ、相変わらず人気もんだなぁ神原せんせー?」
 強い薬品の匂いに眉をしかめ、わざと嫌味を吐くと鳶色の瞳がゆっくりと俺に向けられる。
「……嫌味を言うために来たんですか? 大門先生も暇ですね?」
「マサルって呼べって言ったろ?」
 予想通りの嫌味返しに鼻で笑いつつ、拓也の隣に腰を下ろす。嫌な顔をされたが無視だ。
「なんで態々隣に座るんですか」
「此処がいいんだよ」
 文句を言う拓也をスルーして、目の前のテーブルに小さな包みを見る。おそらく、女生徒の贈り物だろう。何もない日だというのにご苦労だな。ぼんやりと菓子が入っているであろう赤い包みを摘まんで持ち上げる。あー、なんかもやもやすんな。
「これ、どうすんの?」
「大門先生の好きにしてくださいよ」
 俺だっていらねーよ。という言葉は呑み込む。もともと押し付けられたものですし、と言いながら立ち上がろうとする拓也の腕をつかんだ。包みをテーブルに軽く放り投げ、中途半端に腰を浮かせた拓也の体をソファーに引き倒す。馬乗りになって拓也の表情を覗き込むと、眼鏡の下の瞳が一瞬だけきょとんと瞬く。
「……嫉妬?」
 しかし、すぐに挑発的な笑みを浮かべて、俺の肩に手を置く。
「そうだな、嫉妬だぜ。あと敬語止めろよ」
「俺は貴方の後輩ですから、と言ったら?」
「その生意気な口を塞ぐだけだ」
「口を塞ぐだけで済むんですか?」
「わかってんなら、聞く必要も答える必要もねーだろ?」
「相変わらず、強引な人だ」
 ははっ、相変わらず可愛げのないやつだ。まぁ、素直にはいはい言う事を聞く女よりも、こいつの方がずっと面白いけどな。
 邪魔な眼鏡をとりさって、弧を描いたままの唇を塞いだ。


秘め事はチャイムの音に掻き消され
(なんだかんだで、こいつに溺れているんだ)


先輩体育教師のマサルと、後輩理科教師の拓也
20120201

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