忠誠とポリアンサ
緑の淡光と刃の光
1/5
緑の淡光と刃の光月星祭の前日、ルーウェンはリカシア王国の国王に呼ばれていた。国王は跪くルーウェンに目をやると優しい眼差しを向けた。ユキリア以外の家臣を下がらせて国王はルーウェンに言う。
「面を上げよ」
ルーウェンは何も言わず、国王を見る。
「隣国、ユーリア帝国の王子が明日の月星祭に来ることになった。ついてはルーウェン、お前に護衛を頼みたい」
「私は……私はエリカ様の騎士です」
「分かっておる。だが、お前以外に頼める者がおらぬのだ」
「何故ですか?」
「お前でなければならないからだ」
ルーウェンは目線をユキリアに向けた。
「ベヴァイスの力が必要になるかもしれないということだ」
「魔術使える騎士は私以外にもおります。神子かとて同じこと」
「……ルーウェン」
ルーウェンは何も言わない。ただ目を腕に向けて伏せた。昔を思い出すように腕に触れる。
「……わかりました。ですが、時間になれば私は自分の仕事をしますよ?」
国王に対してルーウェンは一介の騎士。だが、ルーウェンは呆れたように言った。それを国王は咎めることはしなかった。
ルーウェンは何に対しても無関心であること。その無関心の中にある優しさを彼は知っている。その内に秘める想いと使命をも。知っているのに何もしないでいた。
「話は以上でしょうか?」
「ああ」
「では失礼します」
国王を見上げ、ユキリアを一瞥した。一礼して謁見の間を静かに去った。
14
14
.