夢見た景色
繋ぐ者たち
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喧嘩ならずっとしてきていた
異国で、違う人種と
一方的にやられるのは趣味じゃない
だから喧嘩になる
喧嘩と戦いは違うけど
架け橋の戦い
「虹の守護者はどんな者でも仲間を信じていた、と伝えられています。しかし、他のリングと異なり、それしか伝えられていません」
「……開始しなさい。特設フィールドが無い理由なんていらないわ」
「虹のリング、ソウジュ・ツレサートVS西城銘歩、勝負開始!!」
勝負が始まっても、二人は動かない。
「どちらも動かんではないか」
「動かないんじゃない。動けないの」
「どういうこと?」
「見てれば分かるわ」
銘歩は弓を構えず、ただ持っている。ソウジュも持っているだけで構えていない。青い刀身の刀を。
「ずいぶん、面倒な武器を持っているのね」
「まあね。ワタシの家、弓と剣を教えてるから」
「だから、変型弓なの?」
「うん。ちゃんと対近距離もしてるよ」
「ふうん? じゃあ、気をつけないとね」
「そうだね」
銘歩が矢を放つ。弓という予備動作がいる分に先手必勝ということかは分からない。放った矢をソウジュは刀で振り払う。銘歩はソウジュの前にいた。ソウジュの少し手前で着地し、距離を縮める。手には短剣が握られていた。それを振りかぶる。
「っ……!」
ソウジュは刀で短剣を防ぐ。銘歩との真正面からの勝負になると思われたが、それはなかった。
銘歩が足払いをし、ソウジュの体勢を崩した瞬間、銘歩はリングが通されている紐を切る。
「なっ……」
「勝負有り! ってね」
銘歩は弓から手を放して短剣を地面に放り突き刺した。ソウジュの手首と胸倉を掴んで体をあたしたちに向ける。そのままソウジュを背負い、背中から地面にたたき付けた。リングを取りに行き、半分のリングを一つに戻した。
「これでいいの?」
「はい」
「虹のリングは……」
「言わなくていいわ。あたしの負けよ。銘歩さん」
「ソウジュさん」
ソウジュは銘歩の前に行って、手を出した。
「まさか、最初から戦う気がなかったなんてね」
「へへ。キセキから、ヴァリアーは戦闘集団だから大概の攻撃は防ぐって聞いてたんだ。初撃はそれが理由なんだけどさ、やっぱり嫌じゃん? 傷付けるのってさ」
「変わった人」
「そう? 医者やってるからかな。傷付けるより治す方がいいよ。もちろん、怪我や病気は無い方がいいけどね」
「あなたとは、戦う前に会いたかったわ」
「うん!」
強く、握手を交わしている。
「キセキ!」
「ん?」
「死ぬことのないように」
「あー……うん。ま、ソウジュが心配することじゃないよ」
ソウジュはザンザスの前に行く。
「申し訳ありません」
「……」
「弁解はしません。負けたのは事実です」
「負けたのはお前の甘さからか」
「いえ。私の油断と彼女の勇気です」
「勇気?」
「傷付けずに戦う勇気です」
「……次はねぇぞ」
「はい」
相変わらず、ソウジュには甘いな。ザンザスは何故か、ソウジュとあたしには甘かった。
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