夢見た景色
秘密事
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戦いの幕は落とされる
予想よりも早く
俺は何も出来ない
あの時、あいつを護ると誓ったのに
俺はまた、何も出来ないのか
秘密事
アメリカへ渡って日数が経ったある日。門外顧問から連絡があった。ヴァリアーが攻めてきた、と。
「銘歩」
「何?」
「アメリカ、発つ日が来たよ」
「……そう」
銘歩は俯いて、家を眺める。道場から見える家。銘歩がずっと住んでいた家。
「離れる、のかぁ」
「売却しちゃうの?」
「……ううん。道場の門下生だった子が管理してくれるって」
「信用できるの?」
「うん! 同僚だもん。それに、ボクを恐れてるみたいなんだよね」
銘歩は首を傾げた。理由がわかっていないからだ。
「じゃあ、あたしはやる事あるから」
「え?」
「飛行機の手配」
「あ、うん。また後で!」
あたしにも、あんな時代があったのかな。どうにもならない問い掛けを、自問した。
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