夢見た景色
脆弱なもの
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傷ついても構わない


あいつの気が済むなら


あたしは傷ついたっていい


だから、関係ない奴を巻き込むな


あたしは逃げないから





脆弱なもの






今日も暴力を振るわれる。もう慣れきったそれに、ため息をつきたくなった。痛いのが好きだとかいうマゾではない。ただただ、逃げないと決めたから。
だから……。



「何してるの?」

「ヒ、ヒバリ!?」

「どういうことだよ!」



一人の男子生徒が一緒になって暴力を振るっていた男子生徒に訊く。だが、その男子生徒も知らないようだった。



「知らねーよ! 見回りの時間は終わってんだ!」

「ふうん。見回りの時間調べるなんて、いかにもって言ってるようなものだよ?」

「なっ……」

「君たちは姫昔を殴っている、蹴っているわけ。君たち、咬み殺すよ」



彼女を見るが、彼女は一点を見ている。何もないその場所を見る彼女が雲雀には遠い存在のように思えた。トンファーを構えると彼らは去り、そこには雲雀と彼女、キセキだけになった。



「大丈夫かい」

「……」



キセキは何も言わない。座って、腕をだらりとたらし、力ないように見える。雲雀が手を差し延べても動かない。



「どうしたの?」



キセキと目線を合わせ、幼子に問いかけるように、優しく訊いた。



「なん……でもない」

「あるから訊いてる。ほら、治療するよ」

「いい」

「土に塗れた制服を着たまま帰る気かい?」

「別に。あんたに関係ない」



立ち上がろうとしたキセキの身体がぐらつき、それを雲雀は支える。



「姫昔。治療はした方がいいよ」

「……いい」

「だめだよ。悪化したら病院行きだからね」

「それは嫌。保険なんてものないから全額負担」



雲雀はキセキの腕を肩に回して歩き出す。



「その時は負担してあげるよ」

「え?」

「君の治療費、全額負担してあげる」

「何でよ」



雲雀は軽く笑った。



「気に入ったから。それが理由じゃだめかい?」

「知らないわよ。そんなもの、あたしが知るわけないわよ」

「なら、良いね」



有無言わさない、とキセキは思った。

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