夢見た景色
番人と鑰人の悲しみ
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俺は彼女を知っている
昔の彼女も今の彼女も
それは遠い昔に出逢った女性
だけど、今の彼女は知らないだろう
それでも俺は彼女にずっと逢いたかった
番人と鑰人の悲しみ
「金髪の君」
「何」
「その髪と制服は校則違反だよ」
「そんな事知らないわよ。これ地毛だし」
「制服は自前でしょ」
「何がいけないのよ。教材買うのに金要るわ制服で金要るわこっちの身にもなりなさいよ。大体、あたしが校則違反ならあんたはどうなの。他の生徒が着てるものと違うじゃない」
「これは旧制服で学校は認めてるよ。君が着てるのは現制服でも旧制服でもないから言ってるんだよ」
「嫌。これで慣れてるの」
「スカートとネクタイを変えるだけでしょ」
「黒のスカートとネクタイの何がダメなの? スカートはともかく、ネクタイは男子生徒がしてるじゃない」
「それはそういう制服」
埓があなかい。
「……」
相手の奴も同じ考えなのか、トンファーを手にし、あたしを攻撃した。避けると相手は一瞬、驚いた表情をしてすぐに愉しそうに笑った。
「君、気に入ったよ」
「ふうん……そりゃどうも。武器はトンファー?」
「咬み殺す」
「殺れるならどうぞ」
鉄製の棒を足に付けてるホルダーから取り出した。
「そんな棒で僕に勝てると思ってるの?」
「闘らなきゃわからないわよ?」
「そんなことに興味はないね。咬み殺すだけだからね」
「奇遇ね。自分で言ったけど、あたしもよ」
互いの武器がぶつかる寸前で一人の男が間に入ってきた。それに気付いた二人は少し滑り、後ろに下がった。
「何だい、沢田 契斗」
「邪魔しないでよ」
「ってもな、こんなとこで何おっぱじめる気だよ」
「あんたに関係ないわ」
「君には関係ないよ」
「つか、こんなとこで闘わないでください」
「……ここじゃなきゃいいの? 綱吉君」
「いや、そういうわけじゃ……」
「なら言わな……」
キーンコーンカーンコーン
「……あ」
「……教室に行きなよ」
「わかりました、失礼します!! 姫昔、行くよ」
「何でよ」
「良いから!!」
「金髪の君、名前は?」
「沢田 姫昔。あんたは?」
「雲雀 恭弥」
「キョーヤね。覚えておくわ」
「早く教室に行かないと咬み殺すよ」と催促され、綱吉君に引き摺られる形になった。
「はあー、怖かったぁ」
「どこが?」
「姫昔はヒバリさんが怖くないの?」
「何で?」
「ツナ、こいつに怖いものはないぞ。
人に対してはな」
「だって人じゃん」
「……最強……」
「何か言った?」
「き、気の所為じゃない?」
「ねえ」
呼び掛けるその手にはナイフがあった。
「今あんたを殺したらどうなるかな」
「………………姫昔?」
姫昔は悲しい表情で一歩、踏み出した。一歩、また一歩と姫昔は近づいて来る。動いちゃいけない気がして動けなかった。
「なーんて、冗談よ。学校じゃ殺らない。
これは約束するわ」
表情は一変して笑顔を見せた。
「ちょっ……」
「あたし、約束は守る女よ」
歩き出す姫昔。オレはさっきの表情が気になった。殺さなければと、殺したくないと、葛藤があるような表情だった。
その表情が、忘れられない。
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