夢見た景色
同一の存在
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それはもう、何年も前こと


あの日、『情』がなくなった


執着がなくなった


『生きる』ということがわからない


君はわかるの?


誰かの思いを





同一の存在






ヒサトを玄関まで送ったあと、キセキはソファーに横になった。



「……何も知らないくせに……」



あたしのこともあの人たちのことも……。








それはヒサトが家を出る前だ。



「俺はお前が心配なんだよ」

「何で?」

「それは……」

「あたしはあんたに心配されなくてもやってける」

「だけどお前は!!」

「あんたにあたしの何がわかる!」



キセキは叫んだ。



「わからねぇよ。だけどな、お前のことを心配してない奴らばかりと思うなよ」

「…………」

「お前を妹だと思っているし、大切な……」

「何?」

「……」



これ以上は言ってはいけない。

ヒサトはそう感じた。

彼女に言ってはいけない、と思ったわけではない。

だけど、この先を言ってしまうと、キセキがいなくなるような、そんなことを思った。

それは、あの人の血縁だから、それとも彼女を想う気持ちからかはわからなかった。



「もう帰る」

「そう」



キセキは玄関までヒサトを送り、今に至る。

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