LIEF OR DEATH
Pretense
1/2

戦いたくない

戦わなければ自分がやられる

それは嫌だと思っている

これはオレの意思なのか

それとも……



Pretense



オレと人格が変わって、一騎はオレをオレとして扱うことを決めたらしい。明日美はいなくなっていないことに、安堵しているのもあるのだろう。


「魁利。お前はアルヴィスに行くのか?」

「行くけど……オレが訓練するとも限らないだろ」

「そうだな。そういう奴だよな」

「なに。それどういう意味」

「明日美もそういう奴だから、人格が変わっても同じだろうなって」

「……根本は似ている。だが、前提が違う」

「前提?」

「ああ。あいつは大切な奴のために戦うが、オレはあいつのためにしか戦わない。オレがフェストゥムと戦うかは気まぐれだろうな」


気まぐれにしか動かない。それがオレ。心の奥底にある魁利の人格。オレと融合して人格形成が成されたオレは、明日美を中心に動いている。
それは、いけないこと……なのだろうか。能力が使えて、それで攻撃をすれば終わりだ。明日美にに出来ないことが、オレに出来るのだから。
一騎と共にアルヴィスに行き、シュミレーションをする。まあ、シュミレーションをするとも限らないが。


「一騎、明日美」

「総士?」

「今日は向こうだ」

「シュミレーションは?」

「その前に、前回のトレーニングを行っておけ」

「……」

「明日美?」

「オレは魁利だ。……悪いな。オレはあいつと違ってお前に従うつもりはないんだ」

「そうか、お前が……」

「オレを従わせられるとお前も思ってないだろ?」

「昔……魁利[あの子]は私を中心にしか動かない、と明日美からよく聞いていたからな」

「そういうことだ。オレは好きにやらせてもらう」


総士は何も言わない。それは分かった、ということか、それともはなから魁利[オレ]を扱えると思っていなかったのか。総士の考えは分からないが、オレの自由にしていいってことだろう。


「じゃ、オレは行くよ」

「ああ。いや待て。……魁利はいるのか」

「――いるよ。まだ、この中にいる」


そうか、と総士は言った。それ以上、訊くつもりはないようだ。オレもこの体に関してはよくは知らない。ただ、明日美よりも知っていて、明日美よりも扱える。ただそれだけだ。
二人と別れて進むと、遠見と羽佐間と甲洋がいた。遠見が付き添って、羽佐間が一騎を待っていたのだろう。……とても「明日美」として態度が取れそうにない。


「明日美……」

「みんな揃って、どうしたの?」

「明日美、一騎くんと一緒じゃないの?」

「一騎? 一騎なら総士にシュミレーション前にトレーニングしとけって言われてたよ」

「……そう」

「翔子、顔色悪いよ?」


大丈夫? とは言わないが、身体の弱い羽佐間のことだ。明日美なら心配するだろう。遠見がオレを睨むように見ているのが気になるが……。


「大丈夫よ」

「なら、いいけど」


諦めたのか、立ち上がろうとする羽佐間の体が傾いていく。慌てて抱き止めるが、気を失った人間の体は重いため、俺も一緒に倒れていく。羽佐間の体を守ったのは誉めてもいいだろう。


「翔子! 明日美!」

「メディカル・ルームに運ぶから甲洋、手伝って」

「あ、ああ」


甲洋に羽佐間を抱き上げてもらい、オレが担ぐ。担ぐといっても、肩に腕を回すだけだが。人格は男でも体は女だ。遠見より力はあるだろうが、体は男の甲洋よりは華奢で脆い。
心配気に見る二人を連れ立ってメディカル・ルームへと向かう。羽佐間が検査をしている間に遠見は、どうして一騎と一緒にいないかを訊いてきた。確かに、明日美はほとんど一騎と行動を共にしている。今はオレだから少し関係は違う。どう言い訳しようか。


「どうしてなの?」

「私、トレーニングにが……」

「明日美、一騎君の隣を走れるようにって毎日走ってたじゃない」

「あの……」

「あなたは明日美じゃない。あなたは誰? どこにいるの?」


あれ、何これデジャビュ? まあ、なんというか


「遠見には負けたよ。彼女はオレの中に。そして、オレは彼女で彼女はオレ」

「二重人格……?」

「それは小さな命だった」


戸惑う彼女を盗み見た。オレを訝るのが分かる。明日美はオレのこと、総士にしか話してないのか? それとも、昔のことで覚えていないのか……。どちらにしても、オレのことを知らないならそれはそれでどうでもいいことだ。オレがオレであることに変わりはない。


「生を受けた二つの命は危機にさらされることになり」

「え?」

「元々双子で生まれるはずだった命の片方は、生まれることはなく、命の片鱗として半身に宿った」


動揺に目が開かれる。嘘と事実の出来事が混ざり合う事実。
双子で生まれるはずだったが、生まれたのは明日美だけだった。理由は誰にも分からない。そして、こんな体で生まれた理由すらも。

37

37
.
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -