水曜日に、何となく取ってしまった有給。
特にすることもないので、1人でフラフラと上野の国立西洋美術館へやってきた。
建物の外にはロダンの彫刻もあって、自由に出入りできるから、そこで写真を撮っていくだけの人も見かける。
チケットを買って中へ。
¥420という料金は魅力的だ。
だって、私の大好きな”あれ”がこの料金で見られるんだもん。
他の作品を足早に鑑賞し、お目当ての場所で立ち止まる。

モネの『睡蓮』

この空間をグルッと囲んで展示されている。
圧巻だ。
この淡い色調が大好き。
時が止まった様に夢中で見入っていると、いつの間にか、私1人となっていた。
フフっ、贅沢だな...、そう思っていると、足音が聞こえ、私の横で止まった。


「先程から、熱心に観ているな...。」
え!? 話しかけられている!? 声の方を振り返ると、高そうなスーツに身を包み、金色に輝く髪と赤い瞳、まるで絵画から飛び出してきたようなたたずまいのオーラを放っている人が、目に飛び込んできた!
「あ、ええ、好きなんです、この絵が...」
つい返事しちゃった...。危ない人じゃないよね...。
「...確かに、美しいな...」
すごく近寄りがたい雰囲気なのに、こんな言葉が返ってきたのは意外だった。
『睡蓮』を見つめるこの人の横顔から、目が離せなくなってしまった。
ふいにその彼が私の方へ顔を向け、
「長居はできん。そろそろ行かねばならん。お前、名前は?」
「△△...まるです。」
「まるか...」
そう言いながら、突然顎を持たれ、整った顔が近づいたと思ったら、チュと音がして、すぐ離れた!
えっっ、キスされたのっ!今っ!
混乱したまま立ちすくんでいると、あの人は立ち去った後だった...。



あみ様へ→



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