真面目で少しだけ奥手で。
だけど私よりしっかりしてていつも冷静。


…と、思っていました。
少し前の私は。







―年下彼氏―






沖「まきさーん。この書類、数字おかしいですよ。」


 「ええ!?…あ、本当だ。ありがとう。沖田君。」


沖「いいえ。」


そう言ってにこりと爽やかに笑った沖田君は私のデスクに書類を置くとすぐに立ち去る…ことはせずそのまま近くに立っていた。


 「どうしたの?」


沖田君は一つ年下で同じ課の後輩だ。
爽やかイケメンだから先輩、後輩問わずものすごい人気なんだけど当の本人は黄色い声援を受けることは慣れっこなのか涼しい顔をして仕事をしている。

そんな彼だから近くにいてくれるのは目の保養でとてもありがたいのだけど。


沖「いえ、まきさん、一君とは順調なのかなーって思って。」


 「うえっ!?」


ガタンとデスクが音をたてた。
慌てている私を見て沖田君が笑っている。


沖「ぷっ…何て声だしてるの。くくっ…。顔もひどいよ…。」


どうにか笑いをこらえようとしてくれてるけど我慢しようと思えば思うほどおもしろいのか涙目になっている。



沖「あーあ。写メとって一君に送ってあげればよかった。」


 「やーーーめーーーてーーー!!!」


土「うるせぇ!!お前ら何騒いでやがる!」


 「ひぃっ!すすすすみません!!」


声が大きかったのか、離れたデスクから土方部長の怒鳴り声が飛んできた。
って何で私だけ謝ってるの。
沖田君も謝ってよ。
何、僕は関係ないでーすって顔してるの。


私の謝罪の叫び?で土方さんはため息をついて目の前の書類に目を戻した。
ほっとしていると沖田君が私の肩をつついてくる。


 「何よ。もう戻りなさい、自分の席に。」


沖「だから、一君とはどうなのかなーって。」


 「…。」


一君。
彼がそう呼ぶのは隣の課の営業の斎藤一のことだ。
沖田君とは同期で性格はまるで合わなそうだけど仲良くやっているのかよく一緒にいるところを見ていた。
そして彼もまたイケメンである。
沖田派、斎藤派の二大派閥ができているくらいだ。





そんな彼は。




なんとなんと私の彼氏様です。




まさか私も年下のイケメン君が彼氏になるなんて夢にも思っていなかった。


思いを告げられたのは一ヶ月ほど前。
沖田君に誘われ居酒屋へ行くとそこに彼もいた。
それまで仕事でしか会話をすることがなかったけど、お酒が入ると意外と話が弾んだ。
そして居酒屋からの帰り道、二人きりになった瞬間に告白されたのだ。



斎『まだそんなに話してもいないのにこんなことを言うのはおかしいのかもしれませんが…。まきさんのことを…その…前から…好きでした。』


お酒も入っていたせいか頬を真っ赤にしながら必死に伝えようとしてくれる姿にキュンとしてしまった。


それまでは後輩のイケメン君ぐらいにしか思っていなかったけど、一気にドキドキしてしまって、思わず告白を受け入れたのだ。




沖「もしもーし、まきさん。帰ってきてくださーい。」


 「え?」


あ、しまった。
付き合いだした日の一君の表情を思い出していたら沖田君のことを忘れていた。


沖「もう。…会社での二人の雰囲気が相変わらずだったからちゃんと付き合えているのかなって心配してあげたんですよ。」


 「ありがと…。」


一君は公私混同しないタイプだろうなとは思っていたけれど、付き合ってからも会社では本当に以前と態度が変わらなかった。
まあ彼らしいと言えば彼らしいけど…。
少しだけ…寂しいかなー?


ちらりと一君の方を見るとバチッと目が合う。


 (あ!!)


嬉しくなって笑いかけると彼は目を丸くして…逸らした。
え!?
逸らした!?!?!?


沖「あーあ。一君ってなんていうか…。あれ?まきさん?しっかりしてー。」


あまりのショックで沖田君の声が遠くに聞こえた。

逸らされた…。
目、逸らされた………。


沖「ま、この話はまた後で。そろそろ鬼さんが怒っちゃいますからね。」


そう言って沖田君はちらりと土方部長を見た後自分のデスクへと戻って行った。




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