僕には、ずっと…

小さな頃から片想いをしている女の子がいるんだ。

その子は、一つ年上の幼馴染のみょうじなまえ。


僕は、弟の枠から抜け出せずにこの想いを長年ひた隠しにしている。







伝えられなかった想い−−








暑い空気が纏わりつくいつもの変わらない昼休み。

剣道メンバーとお昼を済ませて、寝不足だからと適当に一人空き教室で昼寝をしてから教室へ向かっていた。

結局暑すぎて、寝られなかったんだけどね。
7月の今の時期、窓を開けたって生暖かい風しか入って来ないしそれだけでイライラしていた僕の耳に、益々苛つかせる声が届いた。



「総司ぃ、今日こそ遊ぼうよぉ」

「ごめん、もう遊べないって言ったでしょ」


僕の腕に、自分の腕を絡ませる化粧ばっちりの女の子の腕を解き歩き出すと、「今さら真面目ぶったってむりだよっ」と、嘲笑うような声が背に掛けられて…

顔を顰めた僕は、授業に出る気が削がれて教室のある二階には行かずに保健室へ向かった。

保健室のドアを開けると、白衣に眼鏡を掛けた山南先生がデスクに座っているのが視界に入ってきた。

「おや、沖田くん。どうか…しましたか、と言うか酷い顔色ですね?」

"私は出てしまいますから、鍵を掛けてしまいますが特別に寝ていていいですよ"と言う言葉に甘えて、軽く頭を下げて一番端のベッドへと座ると、布団へと潜り込んだ。

すんなりと寝ていていいなんて、どんな顔色なんだろう。

でも、今は誰とも話したくないからちょうど良かった。

うちの学校の屋上は施錠してないから、サボると先生が呼びに来たりと面倒なんだ。
最近はサボることも減ったけど…

今日はどうしても頑張る気になれなくて。
なぜかって言われたらさっき言われた、”今さら真面目ぶってもむり”と言う言葉。

僕だって…

遊びたくて遊んでいた訳じゃないんだ。

僕の事を一番に見てほしい人は僕を弟にしか見てくれなくて…

悲しくて…どこにもぶつけられないこの想いを忘れるように他の女の子と遊んでみたけど駄目だった。

いつも頭の片隅には、陽だまりのように笑う温かい彼女が居座って出て行ってはくれない。

虚ろな目で、クリーム色のベッドを囲むカーテンを見ながら、段々霞んでいく意識と重くなっていく瞼を閉じた。







ガチャッっと鍵の開く音が微かにして、人が動く気配と金属がカチャカチャする音などが耳について夢の中から現実に引き戻された。

折角寝ていたのにと眉根を寄せた僕はぼんやり天井を見ていた。

山南先生が帰ってきたのだろうか、何の気無しに耳を済ませていると「うーん、どこだ?」と呟いた声…

聞いたことのある…

と言うか…毎日その声が聞きたくて、僕を呼んで欲しいと願う大好きな彼女の呟く声だった。


ぼんやり聞き耳を立てていると、カーテンの横まで動く気配に、咄嗟に目を瞑った。


シャー…


「総ちゃー……って、寝てる…」


カーテンを勢い良く開けて、そう呟いたなまえは、僕の前髪を横に流すように撫でると額に手を置いた。

その手つきが心地よくて…

僕以外触ってほしくないなんて独占欲が湧いてきちゃうんだ。

「そっ、総ちゃん起きてたの?」

パチっと目を開けた僕に、目を瞬いて手を引っ込めようとしたなまえの手を掴んだ。

「ねぇ、もっと触って?」

「……もう、総ちゃんは昔から甘えたなんだから」

そう言って頭を撫でてくれるなまえに目を細めた。
昔からそう、この気持ちをどうしたらいいのか分からなくて…
何時も君に甘えることで、気持ちの折り合いを付けてきたんだ。




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