▼そういうお年頃



土砂降りの雨…
月明かりも差さない廊下を早足に納戸に向かい沢山の手拭いを抱え玄関に向かっていた。

(玄関に置いておけば、帰って来た隊士の皆さんが使えるよね)

今日の夜番は、二番組と八番組だ。
此の土砂降りでは、引き返してくるだろう。
懐に仕舞ってあっても手拭いはびしょ濡れで使い物にならないと、足早に玄関に近付くと騒がしい声と沢山の気配がした。
早くしなくてはと角を曲がり玄関に付いたなまえに、隊士達は気づき”此の様な時間まで起きてたのですか?”と目を剥いた。

『はい。皆さんご苦労様です。良かったら手拭い使って下さいね』

手拭いを手早く配って行くと、手渡した永倉が豪快に羽織と着ている物を脱いで上半身裸になり鍛え上げた筋肉がなまえの前に晒され顔を背けた。

「しんぱっつぁん、こんなとこで脱ぐなよ!なまえが困ってんだろ」

「あ?びしょ濡れなのに着てられっか」

俯き顔を朱く染めたなまえを気遣う平助に、新八はお構いなしに豪快に身体を拭いた。

「なまえ、俺の部屋から着替え持ってきてくれねぇか?部屋濡らしたくねぇからよ」

「おい、自分でなんとかしろよ」

このまま放っておけば口論になりかねないと、承諾したなまえに”じゃあ頼んだ”と風呂場の方へと消えて行った…


主の居ない部屋に、本人の承諾があるとは言え入るのは気が引ける。
永倉の部屋の前まで行き、心の中で”お邪魔します”と言ってから襖を開けた。

向かって右の箪笥に向かう。
寝間着は二段目。
洗濯物を仕舞うのも頼まれるし、部屋が異常に汚い永倉はたまに部屋の片付けまで頼んでいた。
だから、永倉の部屋のどこに何があるかはほぼ分かっていた。
二段目を開けて寝間着を出そうと手を差し込むと、こつんと指先に当った感覚に首を傾げたなまえ。
其れを引っ張り出すと、何やら書物の様だ。
深く考えずに本らしきそれをぱらぱら見た…
人の本を勝手に見るなどしなければ良かったと後悔するのは直ぐの事だった。


『なっ?!』

其処には男女が乱れ狂う様が描かれており、頬が熱くなるのを感じ必死に箪笥の奥へと押しやった……
いつもはこんな所に無いのに…
今みた春本の中身が頭に浮かび首を振り見なかったことにしようと必死になりながら永倉さんの部屋を後にした。

(新八さんの馬鹿…!)

風呂場に向かう途中もずっと春本の事で頭が一杯だったなまえの顔は真っ赤に染まっていた…。



風呂場の前に居た見知った愛しい姿に邪険な表情を浮かべた斉藤は、その者が懸命に首を振り続けて居ることに益々眉根を寄せた。
彼女は斉藤の気配にも気付かず何やらぶつぶつと言いながらまだ頭を左右に振り続けていた。



「なまえ、此の様な時間にどうした?」

必死で頭を降ってたであろう彼女は斉藤の突然の登場に両肩を跳ね上げた。

"は、はじめさん?!"と上擦った声を上げたかと思えば、ふらついた彼女を斉藤は腰を抱き寄せ支えた。

『っ!!』

「大丈夫か?頭をその様に振っているからだ。危ないであろう」

眉根を寄せたままの斉藤に上から見下ろされて居る余りの近さになまえは頬に熱が集まり、沸騰して頭から湯気が出るんじゃないかと思った。
それに堅い胸板に密着するように胸を押しつけた形が先程の春本を思い出し、何故だか火照り出しジンと熱い身体に泣きたくなる。

”なまえ?”と見詰めてくる濃蒼の瞳から目が離せなかった…
…どの位そうしていたのだろうか。
否、時にしたらほんの少し…
だがこんな近付くで、見詰め合っている事で、登り詰めるように身体の奥が熱い。
身体の熱に限界とばかりに息を思い切り吐き出し、斉藤の胸を軽く押した。
”有り難うございました”とよろける身体を壁に手を付きやり過ごすので精一杯だ。


「何処か悪いのか?」

心配そうに覗き込む彼に居たたまれない。
身体が熱くて変な気持ちになるなんて…
はしたないと真っ直ぐな瞳に耐えられず視線をさ迷わせた。

『……これ、新八さんに頼まれたんですけど…どう渡そうかと頭を捻ってました』

「また、新八はこの様なことをあんたに頼んだのか」

『…はい』

思いきり眉根を寄せた斎藤に無理やり笑顔を貼り付けたなまえに"では、渡しておく"と脱衣場に姿を消した彼。
深い溜め息を付いて、極度の緊張と身体に力が入りすぎた所為で疲労感が凄まじい身体に鞭を打ち部屋に戻った。


布団の中……

春本の事と斉藤のことが頭から離れないなまえは、先程から寝返りばかり打っていた。
密かに恋仲の斎藤に変に思われなかったか、頭を抱えた。
斎藤の濃蒼の瞳を思いだし、ときめく胸と比例し少し治まった熱が疼き出す。
だが、斎藤の部屋に行くなど夜這い紛いなことは出来ない…
もう、寝るしかないと布団に潜った時、障子越しに控えめに掛けられた言葉に心臓が早鐘を打った。

「なまえ…入ってもいいだろうか…」

『え、は、はい。』

焦った所為で声が上擦ってしまったが、気づかれなかっただろうか…
頭を捻っている隙にすっと引かれた障子戸の向こうには膝を付いて傍らには盆に湯飲みが乗せられているのが見えた。
静かに部屋の中へと盆を滑らせると、後ろ手で障子を閉める無駄の無い綺麗な所作に目を奪れてしまい、呆けたように息が漏れ出た。
静かに、なまえの傍まで来て座った。

「具合が悪そうだった故…石田散薬を持ってきたのだ」

目の前に差し出された湯飲みと紙に包まれた小さな薬紙を見つめた。
具合が悪いわけではないのだが…
どうしたものかと、考えあぐいていると斎藤の困ったような声が響いた。

「己で飲めぬ程、体調が悪いのか…」

心配を滲ませた視線に居た堪れなくなってしまう。
本気で心配してくれている彼に、欲情しているなどはしたない…
赤く染まる頬を見られたくないと俯いた。
意を決しそうでは無い…
と口にしようとした言葉を吐き出す前に、顎に添えられた手にクイッと上を向かせられて…
薬と水を口に含んだ斎藤に唇を塞がれてしまった。
最後に、練っとりと舌を差し込まれたなまえは、また春本が頭に掠めて一気に熱を増した身体にどうしようもなく斎藤に触れて欲しくなってしまう。
名残惜しげに離れようとした斎藤の襟元をきゅっと付かんで、見上げた。

「っ!」

熱を孕んで、潤む瞳にどくんと高鳴る胸に危機感を感じ、慌てて離れようとしたが、掴まえた襟元で離れることは叶わなかった。
その間も、上気した頬の色香漂うなまえにむくむく沸き上がる欲に負けそうな自分を律するのに必死だった。



必死に口許を引き結び漏れる声を我慢するなまえの弱い胸の頂を執拗になぶる斎藤の頭を掻き抱いた。

それとは別に、腰巻きの下に忍び込んできたひんやりとした手が差し込まれて腰が震えてしまう。
茂みを掻き分け、花芯を擦ると我慢していた声が漏れ出してしまえば其を止める術なども最早なく…

『…ふぁ……ああん…ぁあ!』

「その様に声を荒げたら、皆に聞こえてしまうぞ」

耳元で低く聞こえる愛しい人の声に胸が震えて密壺を締め付けてしまう。
その反応に愛しさを覚えた斎藤は早急になまえのいい処を刺激し、イきそうに腰を震わす姿に魅入った。

「綺麗だ」

『ひん…も、………だめ…!』

己の指を痛いほど締め付けるなまえの額に口付け、なまえに欲情した己の高ぶりを出し、密口に擦り付けた。

何度も繋がった其処だが、今日は何時になく、興奮していると苦笑いが漏れた。
真面目な斎藤は屯所では決して交わることはしなかった。
だが、潤んだ瞳と上気した頬の愛しい人を目の前にしたら、我慢できなかったのだ。
まだまだ鍛練不足だと己を叱咤した。


轟く壁に最奥へと誘われて一気に腰を落とすと、一層高く鳴いたのを良いことに、ゆるゆると律動を始めた。

密壺の中は、蠢くように斎藤を求めて、斎藤もなお其れに答えるように夢中でなまえの身体を揺すった。

『…はぁ、じめ…さん!…すきぃっ!』

背中に力強く回した手に愛しさが溢れて…
「俺もだ」と言葉を繋ぐと、奥深くに弾けた白濁りを吐き出した。




ぐたりとしているなまえの隣へと転がると、抱き寄せて髪を透いてやると目を細めて胸へと頬を擦り寄せてきた。
この至福の刻がいつまでも続けと願う斎藤だった。








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