▼太陽な人



紅葉が綺麗な11月某日。

私は登山用の、ピンクの上着に黒のスカート、黒のタイツに身を包んで周りの景色に心弾んでいた。
紅葉の時期だけありすれ違う人に軽快に挨拶していく。
景色だけではなく、大好きな人と二人登る山に何時も以上に心弾んでいた私の歩調は軽やかだ。


『新八さーん!こっちこっち!』

跳び跳ねて、手を大きく振り呼ぶ私に大きな身体を揺らして小走りに走ってくる男の人………永倉新八さん。
私の登山仲間の一人だ。
ムードメーカー的存在の明るい彼と登る山は笑いすぎて毎回呼吸困難にならないか心配だ。
何時もは数人と登る所なんだけど、今日は地元の小さな山のため二人で登っていた。

『大丈夫ですよ!新八さんこそ息上がってますよ』

「俺は体力は自信があるんだよ。みょうじちゃんには負けないぜ!」

新八さんの負けず嫌いに頬が緩む。
何事にも熱くて真っ直ぐな彼が好きでたまらないのだ。
大きな背中を見ていると抱きつきたくて仕方なくなる。

(本当に抱きついたら、どうなるかな。新八さん)

きっとあたふた大慌てな新八さんを想像して胸がきゅんとなる。


『私だって新八さんには負けませんよ!何てったって私のが若いんですから!』

何故か競う様に歩いていく。
新八さんに負けず劣らず私も負けず嫌いなのだ。
標高が高くない山だから少しは気が楽だった………
そして油断したことに、この後後悔する新八さんだった。



暫く歩いて、頂上に着いた私たちは茶屋で休憩をしていた。

『新八さん!ここのお抹茶有名なんですよ。疲れた身体に苦さが染みて美味しいです。』

「お、そうなのか?」

『そうですよ。近くてなかなか登る機会もないですから一口飲みますか?』

ぐいっと茶碗を新八さんの前に差し出すと、茶碗をじっと見つめ赤くなる新八さん。

『お抹茶嫌いでしたか?』

「い、いや…いいのか?」

『はい、どうぞ』

私から茶碗を受け取り、暫く其を見つめていた新八さんに首をかしげた。

(さっきから茶碗ばかり見つめてるけど…)

不思議に思い口を開こうと思ったら、新八さんは茶碗に口を付け…
がばっと私を見て"うまい!"とニカッと笑った顔を見て頬が緩む。
彼の笑顔はお日様のようで暖かい…この暖かい笑顔の彼が好きだ。



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