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心音





気付けばいつも同じ場所を陣取られている。




「タカ丸さんって、いつも左側に居ますよね」


日課である在庫確認を淡々と進めながら兵助は何気なく聞いてみた。
まあ深い意味なんて無いのでしょうけどと付け足して、少し離れてはいるがやはり左隣りに立って作業をしている相手の返事を手を止めずに待つ。


「んー。兵助くんの心臓に近いからねー」


いつも通りに柔らかく笑いながら答える内容は余りにも予想外な上ぎりぎりに物騒で、兵助は無意識に距離を空け怪訝な顔を向けた。


「あ、傷付くなあ。それ」
「…命を狙われる覚えは無いのですが」
「そんなんじゃないよー」


そう言いながら空けた距離を難なく詰められ、タカ丸の指が髪を絡める。
今この状況で自分の意思と無関係に早くなる鼓動が兵助には全く理解出来なかった。怯えているわけではない。ただいつもより顔が近いだけ、なのに。

「僕のせいでね。兵助くんがどきどきしちゃう音を、聞きたいの」


ほら今も聞こえるよなんてまたふわりと笑うのを間近で見ながら、兵助は熱くなる顔を隠す様に手をあてた。




(無意識の動悸)



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