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一緒がおいしい!
昨日朝に永四郎から買い食い禁止令を出されたけど、結局その日中に破ってしまった。部活の後の毎日の楽しみは寄り道と、慧くんとの買い食いなのだから仕方ない。
永四郎の一週間ゴーヤ縛りはキツいけどそれでも。
「わん、慧くんとこーやって買い食いできるのでーじ嬉しい」
「ぬーやがいきなり」
いつもの店のお決まりの席で、いつもと変わらないメニューを頬張りながら慧くんはわんを見返した。
癖のある食べ方のせいで、いつもと同じ右のほっぺにソースがついてるのが無性に可愛い。
「昨日の帰りのやつ! わんも慧くんと買い食いするの、好きやっし」
そう言って冷めかけたポテトを口に入れる。
昨日、帰り道で声をあげてくれた。わんと買い食いするのが毎日の楽しみだって。
その後すぐ二人で買い食いに走ったおかげで、今日はその事で永四郎に怒られて反省しろとゴーヤ一週間の刑を課せられなんとか今日の分は飲み込んできた。何度食べても本当に苦手な味だけど永四郎が怖いから我慢する。
まぁ昨日のあの一言は慧くんにとって深い意味なんてなかったんだろうけど、嬉しかったことには変わりない。
「同じみたいで、嬉しかったばぁ」
寛はあぁ言ったけど、慧くんと食べる物は家で食べるのとは別で、どんな物でも一番に美味しくなる。
わんは慧くんのことがでーじ好きだから一緒に居られるこの時間がとても大切なんだ。
「うぅむ。裕次郎は不思議どー」
「あい? どこがよ」
一息ついてストローを噛む慧くんは、うーんとどこか考える様子でわんを見る。
「わん、裕次郎と食べる飯がでーじまーさんばぁよ」
「え、」
「そりゃあ寛が言ってたみたいに真っ直ぐ帰れば良いだけやしが、わんは裕次郎と食べる飯が一番やし」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
自他共に認める悪い頭を全力で回転させて辿り着いた答えはとても自分に都合のいいものだったけど、慧くんはまた佐世保バーガーを頬張っていつもみたいに笑った。
「理由はわからん!」
顔がみるみるにやけていくのが自分でわかる。
あぁもう、なんで慧くんはいつもわんを泣かせようと!
「…慧くんずるい」
「ぬーよ」
ソース付いてるよ、と言うと返ってくるいつものありがとうを、顔が熱いせいでうまく見返せなかった。
(ゴーヤも多分、堪えられる!)
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