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「滝は柔らかそうだな」
「どう言う意味です」


成長途中の身体の出来を言われたのかと、滝夜叉丸は恨めし気に小平太を見た。


「いやー、そのまんまだ。つーか実際柔らかんだけどな」
「…褒めているのですか」
「可愛くて良いと思うぞ」

話が噛み合っていないのは気のせいではないだろう。滝夜叉丸は静かに溜息を吐いて書を引く手を止めた。
未完成な私の身体を成人として完成されている先輩と一緒にしないで頂きたい。二年の差は大きく、どれだけ鍛えても目の前の方に追い付く気配もないのを内心焦り気にしていた。
ぼんやりと情事で抱かれる小平太の逞しい胸板を思い出して滝夜叉丸はふるふると頭を振った。
その動作を一通り眺めていた小平太が、笑顔で距離を詰めるのに滝夜叉丸は気付く。

「滝の肉は柔らかいし。美味そうだ」
「せっ…、先輩…?」

腕を引かれ、憧憬の胸板に抱き込まれる。首筋に褐色の髪が当たって擽ったい。
突然何をなさるのですか、と問うより先に首筋に鋭い痛みが走った。

「い、ッ!」
「ああ悪い、少し血が出た」

後で伊作に見てもらおうなんて笑いながら言う小平太を滝夜叉丸は目に涙を浮かべながら見返す。こんな箇所のこんな痕、どう説明して手当てしてもらうのですか!と捲し立てたかった。
しかしそれも叶わず、噛み付かれて薄く血の流れる首筋を舐められる。それだけで拒否権は無くなり何も言えない。


「今から食らう」


耳元で優しくいただきますと言われ、諦めた滝夜叉丸がそれに返す言葉は一つしかなかった。



(骨も残さないでください)



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