? 登場人物 ¿

宇賀神紡木(ウガジンツムギ)
宇賀神綴(ウガジンツヅル)


白軍と赤軍の兄弟の、もしもの話。









 





 俺は、弟の事が、嫌いなんだと思う。

 突然何を言ってるんだと思うよね。うん、別に良いよ。俺が話したいから、話すだけだから。

 昔は、多分普通に仲の良い兄弟だったんだと思う。俺も、アイツの事は好きだったし。
 近所のお兄さんと三人でお揃いのピンを買って、三人で同じ場所にそれを付けたりしてた。

 それが、いつからだっただろうか。きっかけは、何だったろう。
 多分、きっと、アイツの力が目覚めた時からちょっとずつ歯車が狂ってきたのかもしれない。
 「一騎当千」と呼ばれる様になったアイツと、落ちこぼれの俺。

 悔しかった。アイツに勝てないのが。
 寂しかった。いつも一緒だったアイツに、置いて行かれたような気がして。
 それでもまだ、俺はアイツの事を嫌ってはいなかった。だって、勝てないのは、追いつけないのは――俺が悪いんだから。

 中学を卒業して、高校に上がる時。入学式の席に、アイツはいなかった。
 後から、赤の高校に入ったらしい事を聞いた。
 理解できなかった。理解したくもなかった。俺達は白軍として、白のために戦うことを教えられてきた。それなのに――何故、赤軍に?
 力もあって、周りから認められているのに、何故裏切る?
 
 だから、アイツの暗殺命令が出た時は内心喜んでいる自分がいた。


「ねぇ、綴」
 名前を呼ぶと、綴はのろのろと顔を上げた。相変わらず、腹の立つ顔をしている。
 見れば見る程、自分にそっくりだ。違うのは目の色くらい。
 どうして、と綴の口が動いた。
「命令が下ったんだよ。お前を殺せ、ってね」
「何で……どうして、紡木が……だって僕達」
「兄弟だろ、って言いたいのか? ハッ、今更よくそんなことが言えるよな」
 何で、どうして?
 そんなこと、俺が聞きたい。
 裏切ったくせして、被害者面しやがって……本当に、腹が立つ。
 ポケットに忍ばせていたナイフを手にし、一歩踏み出す。反対に綴は一歩後退った。
「裏切って赤になった奴のことなんて……俺は弟だと思わない」
「……っ、紡木、それは――」
「俺の名前を気安く呼ぶな」
 綴はぐっと押し黙り、俯いて手を握りしめる。あぁ、またそういう顔をする。だからコイツは嫌いだ。
 ナイフを逆手に持つふりをして、柄を相手へ向ける。配給された俺の、愛銃。
「さようなら、宇賀神綴」



 叶うことなら、お前が赤じゃないと信じていたかったよ。








おしまい





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