? 登場人物 ¿

黒之部煌(クロノベコウ)
黒之部遼(クロノベリョウ)


フリーワンライ参加
お題【僕と君の間】









 



 チュンチュン、と鳥の囀る声が聞こえる。まだ眠たい目を開けると、カーテンから漏れる光が見えた。あぁ、もう朝か。
 顔を反対方向に向けると、隣で寝ている煌の顔が見えた。顔にかかったピンクのメッシュを起こさないように払う。

「ん……」

 煌の瞼が震え、ゆっくりと目を開く。まだ焦点合わない綺麗な黒色の瞳が僕に向けられた。
 一度寝たら中々起きないんだけどな……。今日は眠りが浅いのかな。

「ごめんね、煌。起こしちゃったかな」

「……別に」

 脇の下に通されていた腕に力が込められ抱きしめられた。ちょっと苦しい。
 首に嵌められた首輪から伸びていた鎖を、煌が邪魔そうに払う。

「……遼」

「水、だよね。持ってくるから、ちょっと離して?」

 緩められた腕から抜けだし、ベッドから下りる。キッチンへ向かおうと足を踏み出したところで何かに足を取られた。そのままフローリングに顔面から転んだ。

「……何してんの、大丈夫?」

「いったた……だ、大丈夫。ちょっと待っててね」

 強か打った鼻を押さえ起き上がった。もう一度歩き出そうとすると、今度は首を引っ張られて後ろに倒れる。固い床を覚悟していたが、それは煌によって阻止された。煌の腕の中に倒れ、顔を見上げる。

「いいよ、もう。自分で行く。ついでに冷やすもん持ってくるから」

 ベッドに座らせられ、キッチンへ向かう煌の背中を見送る。……鼻痛い。鼻血、出なくてよかった。
 コップに汲んだ水と冷えたタオルを手に戻ってきた煌。タオルを受け取り打った鼻に当てる。

「俺、バイト行くから。飯は……適当に食っといて」

 着替えをしカバンを持った煌が部屋のドアを開ける。そっか、今日はバイトの日なんだ。
 ベッドから立ち煌に駆け寄ってその背中に抱きつく。びっくりされたけど、その後頭を撫でてくれた。

「……いってくる」

「うん。いってらっしゃい」

 パタンとドアが閉まり、次いで玄関が閉まる音が聞こえた。部屋が静寂に包まれる。
 煌がいないだけで、部屋がとても広く感じる。今日は何時に帰ってくるのかな。
 思わずため息が漏れたその時、ガラッと窓が開いた。驚いて振り向く僕の視界に、白い影が映り込む。

「にゃはっ、ハローアリス」

 突然現れたソイツは、窓の縁に腰掛けひらりと手を振った。
 余所者……。僕と煌の世界に土足で踏み込むなんて、許さない。

 余所者は消さないと。僕と君の間に、第三者はいらない。
 ずっとずっと、二人で一緒にいるんだ。

 伸ばした僕の腕は、白いパーカーを着たソイツを掴む。そのまま部屋の中へ引きずり込んだ。そしてフローリングへ押し倒し馬乗りになる。



「……いただきます」








End






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