? 登場人物 ¿

一ノ瀬澪(イチノセミオ)
篠崎結衣(シノザキユイ)


フリーワンライ参加
お題【「また会えたね」】









 カーテンの隙間から、月明かりが漏れている。目元を月明かりに照らされ、眩しそうにその目を細め一ノ瀬澪はため息を溢した。
 あと数分で日付が変わる。なかなか寝付けない澪は、何度目かわからない寝返りをベッドの上で打った。そして、去年のことを思い出すと静かに目を閉じる。

 あの日もまた、こんなふうになかなか寝付けなかった。

 0時ぴったり。枕元の携帯が小さく震えたことに気がついた澪は、横になったまま携帯を開いた。新着メール1件、の表示を確認するとメールを開く。相手は、彼女の親友である篠崎結衣からだった。

『起きてる?』

 たったひとこと。そう書かれた文面を読んだ澪は、自分が起きている旨を書くとそれを結衣に送る。返事はすぐに返ってきた。

『良かった。じゃあ、ちょっとだけ出てきてくれない?』

 そのメールを読んだ澪は慌ててベッドから起きると、カーテンを開けて外を見た。家の前には、携帯を手に立っている結衣の姿。
 寝間着の上からパーカーを着ると、澪は静かに階段を降り玄関を開けた。玄関の先に立っていた結衣は、澪の姿を目にすると笑みを浮かべる。普段は2つに結われている髪が、風にふわりと揺れた。

「どうしたんですか、こんな時間に?」

「ごめんね、夜遅くに。でも、どうしても伝えたいことがあって」

 何を、と問おうとした澪。しかしすんでのところで彼女は言葉を飲み込む。聞かなくてもわかった。だって、今日は年に一度の特別な日なのだから。

「電話やメールでも良かったのに。また学校で会えるんですから」

「直接言いたかったの! それに、あたしが1番に言いたかったんだもの」

 半ばむくれ気味に言う結衣の姿に、澪はくすりと笑みを溢す。それに釣られるように、結衣もまたクスクスと笑った。
 
「澪――」





 枕元の携帯が、ヴヴっと小さく震えた。その音に澪は目を開ける。時計は、0時ぴったりを示していた。どうやら、日付が変わったようた。
 こんな時間にいったい誰が、と澪は携帯を手に取った。画面に触れた彼女の指がピタリと止まる。
 
“新着メール1件 篠崎結衣”

 ありえない人物の名前に、澪は慌てて携帯のロックを外した。そしてメールを開く。
 見間違いでも何でもなく、メールは結衣からだった。だけどどうして。結衣はとっくにこの間、この世を去ったはずだ。それなのに、何故メールが――。
 メールの文面を読んだ澪の目から、涙が溢れる。そして、愛おしそうに携帯を胸に抱いた。

「……また、会えたね。結衣」

 小さく呟いた彼女の言葉は、月明かりの差しこむ部屋に溶けていった。



“澪、誕生日おめでとう。
約束、守れなくてごめんね。
大好きだよ。”




End






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