? 登場人物 ¿
ニト
ロス=ファントム
眠っている君の、透き通るような銀の髪に指を絡めて見る。気配に敏感な君が目を覚ましてしまうのではないかと心配したが、その心配は必要なかったみたいだ。
窓から差し込んだオレンジ色の日差しが、室内と君を赤く染める。その様はなんだか凄く綺麗で、幻想なんじゃないかと思ってしまう。
「……ロス」
名前を呼ぶ。返事はない。
固く閉ざされた君の瞳は、どれだけ待っても開く気配を見せない。それは当たり前なのだ。だって――もう二度と、君は目を覚まさないのだから。
知っている。全部、わかっているんだ。
ありふれた明日に、君はもういない。その事実が僕の胸を締め付け、呼吸が出来なくなる。
「起きてよ…ロス……」
暗い闇しか知らなかった僕に、君は世界を教えてくれた。そして何より、こんな僕を愛してくれた。
それなのに、僕は君に何も出来なかった。助けられなかった。
ありふれた明日が、僕を苦しめるのなら。僕は明日なんていらない。
君のいない世界に生きるのは、あまりに苦しすぎるから。
どうか、僕をそっちへ連れて行ってくれないか。
眠る君は、まだ答えてくれない。
*おしまい*
[お題はお題bot(@odai_bot00)様からお借りしました]