それから下らない話をしつついつの間にか3時間が経っていた。
柳生がウトウトし始めたので帰ることにした。
夏の夜も9時ではもう暗い。
街灯の明かりに虫が群がっていた。
俺は柳生を背負い、柳生の住んでいるマンションへ向かっていた。

「重…」

俺と柳生の体格はあまり変わらない。
中学の出会った頃は柳生の方が大きかったが、今では俺の方が少しだけ大きい。
時が経つのは早く、初めて出会ってから8年、付き合い始めて6年経った。

「やーぎゅ、起きてるかのう?」

「……なんれすか、におくん」

呂律はあまり回っていなかったが、起きてはいるようだ。

「一緒に住まんかの?」

「…一緒に?」

俺の首に回っていた柳生の腕がぐいっと締まった。

「ぐへ」

いきなりだったため、変な声が出た。

「いっしょー、住む住むー、へへ」

「ちゃんとわかっとるんじゃろうか…」

明日もう一度聞いてみることにする。

「におくん、におくん」

名前を呼びながら俺の頬をツンツンとつついてきた。

「なんじゃ?」

少しだけ柳生の方に顔を向けた。

「におくん、私、貴方のこと、だあいすきです」

それはあまりにも不意で、あまりにも可愛くて、一瞬意識が吹っ飛びそうになった。
柳生はあまり面と向かって「好き」とは言ってくれない。
本人曰く、「愛の言葉はそんな容易く使うものではありません」だそうで(ただ言うのが恥ずかしがってるだけだと思うが。)。
だからこれ以上ないほどの幸せなのだ。

「あぁ、俺も柳生が大好きじゃ」

柳生は俺の言葉を聞くと、すぐ眠ってしまった。
俺は前を向いてまた柳生の家へ向かう。
夏の夜の涼しい風が熱くなった顔を冷やしてくれた。
柳生は今日のこと、ちゃんと憶えているだろうか。
明日、からかってやろうと決めた。




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