「柳生」
俺は今、独り暮らししている柳生比呂士の家に来ている。
いつものように大好きなシリーズ物のミステリー小説を読んでいた柳生が驚いたように肩をビクつかせた。
今まで柳生が真剣に読んでいるときは話しかけてこなかった。
「デートするぜよ」
こののんびりした空間は嫌いではない。
だけどたまには出掛けてお喋りでもして楽しみたいのだ。
「急ですね…」
柳生は読んでいたページにお気に入りのしおりを挟み本を机に置いた。
「どこに行くんですか?」
「夕食食べに行かんか?」
もう時刻は18時すぎだ。
「じゃあいつものわしょ「却下」
柳生が少し膨れた顔をする。
あぁ、本当可愛い。
いつもの紳士からは考え付かない顔だ。
自分だけがこの顔を知ってると優越感に浸る。
「じゃあ仁王くんが決めてください」
「そうじゃの…」