amour3









「真田」
「ん、なんだ仁王」
「真田にお願いがあるんじゃ」
「また何か企んでるのではないだろうな」
「今回はそんなんじゃないきに、…いつか分からんが柳生が俺を探しに訪ねてくる、その時に『o』と伝えてくれんか?」
「おう?」
「違うて、英語の『o』じゃ!!」
「すまん…わかった、伝えると約束しよう、約束を破るのは性に合わんからな」














「幸村」
「あぁ、仁王か、どうしたの?もう皆帰ったよ」
「幸村にお願いがあるんじゃが…」
「仁王から直々なお願いとは珍しいね、で、何だい?」
「いつか分からんが柳生が俺を探しに訪ねてくる、その時に『r』と伝えてくれんかの?」
「ふぅん…うん、楽しそうだし、ちゃんと伝えるよ」








市内の公共のテニスコートへやってきた。
部活後にこのテニスコートで仁王君とダブルスの作戦会議をよく行っていた。
あの頃はお互いよく衝突しあっていた。
性格も外見も真逆な私たちがまさかダブルスを組むなんて到底思ってなどいなかった。
だがその真逆さが逆によかったのかもしれない。
私に足りないものを彼が持っていた。
彼に足りないものを私は持っていた。
お互いが相手のことを求め合っていたのだと思う。
一番奥のテニスコートに行くと聞き覚えのある声とラリーと思われる激しい打球音が聴こえた。
「真田くん!幸村くん!」
「あぁ、柳生久し振り、ちょっと待ってて、終わらせるから」
幸村君が打った球はものすごい早さで真田君の横を抜けていった。
「はい、終わりだよ真田」
「まだだ!もう一球だ!」
「もう10球はやってあげてるよ?というか柳生を待たせちゃ悪いだろ」
「む?柳生じゃないか」
「お久しぶりです、真田くん」
お二人に最後に会ったのはもう半年ほど前だろうか。幸村くんと真田くんはプロの世界に行く。中学時代のその他のレギュラーたちも自分の進路を決め卒業を迎えた。
私も医大へ進む。そのために長年暮らしていたこの街を離れ東京で独り暮らしを始める。
「柳生もテニス、一緒にやるかい?」
「…いえ、私はもうテニスは…」
「…そうだったね、そういえば今日はどうしたんだい?」
「変なことをお尋ねするんですが…以前、仁王君から私への伝言を預かってはいないでしょうか、多分中学の時だと思うのですが」
「あぁ、覚えてるよ。ちょうど引退して少し後くらいだったかな」
「もちろん覚えているぞ」「俺が『o』で」
「俺が『r』だ」
「あ…ありがとうございます!」
「あの時の仁王ね、なんかいつもと違ったんだよね」
「いつもと違う…?」
「あぁ、いつものいたずらを楽しんでる顔じゃなく、何て言うのかな…純粋に楽しんでる顔をしていたんだよ」
「そう…ですか…」
"純粋に楽しんでいた"
そう聴いて、仁王君の顔が過った。
二人でダブルスを組んでいたとき、前衛の彼は点をとる度にこちらへ向いて笑いかけてきた。

「柳生、東京へはいつ行くのだ?」
「来週末に行く予定です」
「来週末か、じゃあそれまでにレギュラーで集まらないかい?」
「それはいいですね!楽しみにしています。では、私はこれで」
「うん、またメールするよ」


「柳生、あの頃に戻ったようだったな」
「そうだね、あの2人はお互いがいないと駄目なんだろうね」
「俺にもお前がいないと駄目だ」
「何?告白?真田大胆〜」
「なっ…!違う!!そういう意味では…!」
「分かってるって」




 




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