この扉の向こうの光景など容易に想像ついた。
汚い雌豚が嬌声を上げ、快感に溺れている。
そしてその雌豚を快感に溺れさせているのはあの男。
考えただけで吐き気がする。
今すぐトイレにでも駆け込んで喉の奥に指を突っ込んで無理矢理吐き出したい気分だ。
だが、もう慣れた。
今日が初めてと言うわけではない。
しかし慣れたからといって別に怒りを覚えないわけではない。
むしろ何度も繰り返す彼にさらに怒りを感じている。
ノックもせずに扉を開けた。
「仁王君」
出来るだけ冷たく低い声で彼の名前を呼んだ。
「柳生、来たんか」
彼はこの状況特に焦る様子もなくこちらを向いて言った。
一方女の方は私が来たことに驚いて回りにあった服をかき集め教室の隅へと逃げた。
(また違う女…)
「仁王君、ここがどこだか分かっているのですか」
「視聴覚室じゃな」
「分かってるなら、学校でやらないでくれたまえ」
「じゃあ、学校じゃなかったら柳生は許してくれるんか?」
どんなに彼に怒りを感じても、私は彼のことを嫌いになどなれない。
多分彼もそれをわかって聞いてるんだと思う。
そんなことを考えていると後ろで教室の扉が閉まる音が聞こえたのでやっと女が帰ったのだと思った。
「今回のやつも立たんし、イけん」
彼はそう言いながら萎えた自身を下着の中にしまいズボンを上げベルトを締めた。
「…」
「わかっとる?俺はお前でしかイけないんじゃよ」
「……あなたの表現は遠回し過ぎです」
「だってこんなことしてもお前は俺を嫌いになんかならないじゃろ?」
「…」
「のぅ、諦めんしゃい」
「…悔しいですね」
「柳生には俺しかいないし、俺には柳生かいないんじゃよ」
「わかってますよ」
私たちの愛はこうでもしないと確かめられない。
ただでさえ男同士という関係な訳で、心配するのも無理ないが。
「ですがこの方法は身が持ちません」
「おん、もうやめる」
「信じられません」
「じゃあ俺に心配かけんで」
「それでは貴方がもういいと言うほど愛して上げます」
「うん…そうしてくんしゃい」
私は彼が望むようにするだけ。
妖艶に腕を首にかけ彼を誘う。
彼の目は恍惚としていた。
そしてまた私と彼の身体は繋がる。
「柳生」
「はい?」
「やーぎゅ」
「なんですか」
「やぎゅー」
「………愛していますよ、仁王君」
「俺も柳生んこと、愛してる」