私は同学年で同じテニス部でダブルスを組んでいる「仁王雅治」と恋人の関係にある。
告白してきたのは仁王君から。
私も彼に同じ気持ちを抱いていたので両思いだった。
そして付き合い始めて1ヶ月になる。
彼は女性の方から好意を寄せられることが多い。
私と彼が付き合っているとはいえ、男同士なわけで回りに公言することも出来ない。
だから今になっても彼に告白をしてくる女生徒は後を絶たない。
私も最初はしょうがないと思っていた。
でも最近、私の醜くて汚い心が正体を現してきたのだ。
毎日のように靴箱に入っている手紙、放課後に女生徒からの呼び出し。
靴箱を開くごとに仁王君は私ではなくその女生徒の事を考える。
ユルセナイ
なぜ仁王君が他の女の事を考えなければならない?
彼の頭は私の事だけ考えていればでいい。
なぜなら仁王君の全ては私だけのものなのだから。
朝練を終え、私は誰よりも早く着替えを済ませ靴箱へ向かう。
開くのは自分の靴箱ではなく愛する仁王君の靴箱。
開くと今日は2通の手紙
その手紙を取り出して乱雑に自分の鞄に押し込む。
そして何もなかったかの様に自分の靴箱に向かい上履きを出す。
まだ1時間目が始まるまで少し時間があるので立入禁止の屋上へ向かった。
屋上の鍵を締めてコンクリートの上に先程鞄に押し込んだ手紙を置く。
そして鞄の奥からよくある100円ライターを取り出して手紙に火を点ける。
これが私の日課になってきているのだ。
手紙が全て燃え尽きると私は我に帰る。
自分のあまりにも醜い行動に腹が立ち、悲しくて、涙が溢れてくる。
「ごめんなさい…ごめんなさい…仁王君…皆さん…」
誰に伝わるわけでもなく、私は謝罪の言葉を言い続ける。
只の自己満足。
でも明日の朝になればまた手紙を取り出して焼いて、取り出して焼いて、取り出して焼いて………。
何かに取り付かれたかのようにその行為を続ける。
いや、取り付かれたわけではない。
これが本当の私、なのだと思う。
私は精神的にダメになってきていた。
憎しみと後悔が交互にやってくる。
今日もまた彼の靴箱を開ける。