8月の終わり。
セミはいたる所で鳴いている。
もうすぐ9月だというのに、暑さが弱まることもなく、猛暑日が続いていた。
そんな暑い中、しかも午後1時という、太陽が真下に近づく時間帯。
恋人である仁王君の家に私は向かっていた。
手にはコンビニ袋、中にはアイス・お菓子・飲み物。
事の発端は一時間前にいきなり仁王君からかかってきた電話だった。

『やぎゅー、やぎゅー、俺んち来んかー?』
「いきなりですね…しかも今日とても暑いとか」
『やぎゅーに会えないと俺死んでまうんよー』
「…分かりました、今から行きます」
『アイスとお菓子と飲み物』
「は?」
『まさくん、アイスとお菓子と飲み物が欲しいのぅ』
「貴方って人は…」
『やぎゅーやさしー紳士じゃのー』
「……わかりましたよ、買って行ってあげますから…まったく」
『待ってるからのー』

半強制的に仁王君の家に行くことになり、しかもお菓子を買っていかなければいけなくなった。

太陽がジリジリと私の背中を突き刺し、汗でシャツが張り付いている。
アイスが溶けていないか心配になってきた。
そんなことを考えていると仁王君の家の前についた。
仁王君の部屋の窓を見ると彼が手を招いていた。
玄関のドアノブに手をかけると鍵が開いていたので入らせてもらうことにした。
「お邪魔します」
返ってくる言葉はなく、今家には仁王君だけなのだとわかった。
脱いだ靴を綺麗に揃え、ついでに脱ぎ散らかしていた仁王君の靴も揃えて置いた。
仁王君の部屋は入ってすぐの階段を上ったところだ。
仁王君の部屋のドアを開けるととても冷たい空気が流れてきた。
「さむ」
滴る汗が冷えて、体温が一気に下がっていく。
部屋に入るとベッドの上に巨大なみの虫…仁王君がいた。
「…何やってるんですか」
仁王君はタオルケットに包まって顔だけ出している状態だった。
「何って寒いんじゃよ」
机のエアコンのリモコンの設定温度を見てみると16度まで下がっていた。
「寒いなら上げれば良い話じゃないですか」
私はリモコンをとり温度を上げようとした。
「わー!!やめんしゃい!!」
「タオルケットに包まるくらいなら温度を上げたまえ!」
「いやじゃ!寒い中でこう包まるのが好きなんじゃー」
こういうときの仁王君は絶対に自分の意見は引かない。
だからいつも折れるのは私の方だった。
「好きにしたまえ…」
「やぎゅう、ん」
仁王君が自分を包んでいたタオルケットをバッと開いた。
「え?」
「柳生も一緒に包まるぜよー」
彼はこれがしたかっただけじゃないだろうか。
渋っていると手を引かれ無理矢理タオルケットに入れられた。
「やっ…やめたまえ!」
「やぎゅー、良い匂いじゃあ」
仁王君は私の項を嗅いでいた。
「柳生、寒くない?」
後ろから顔を覗き込まれ、不覚にもドキっとしてしまった。
「あ…暖かいです」
「よかった」
仁王君は私をぎゅっと抱きしめた。
たまにはこういうのもいいかもしれない。



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…このままいけば裏行けそうなんですがあえて書かずに終了^^

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