行く水 | ナノ


波立つ‐3

「あ…れ?緑間っち…?」

黄瀬は帰りの駅で飛びぬけて高身長の男を見かけた。

中学のチームメイトである緑間だ。緑髪をしているので一瞬で分かった。

久しぶりに見る人物に黄瀬は走り寄っていった。


「緑間っち」

ぽん、と肩が叩かれる。緑間は後ろを振り返った。

「…黄瀬」

「グーゼンっスね。今日も部活あったんスよね?」

「当然なのだよ」

「…そして今日も持ってるんスね。何スかそれ。ちょっとキモいんスけど」

「今日のラッキーアイテムは爬虫類のおもちゃなのだよ」

「…」

差し出されたおもちゃに黄瀬は顔をしかめる。

カラフルな彩色が施されたそれはかなり目立つし、苦手な人も多い物だ。

こんなものよく堂々と持ち歩けるな。やっぱしこの人は変だ。かなり。


「…まあ、それは置いとくとして。どうスか、最近は」

「ふん。バスケの方ならば抜かりはないに決まっている」

「へぇ」

「人のことよりお前の方はどうなのだよ」

「俺の方はそこそこっスかね」

「そこそことは随分曖昧な言葉を使うのだな」

眉間にしわを寄せる緑間に、黄瀬は笑った。

しかし実際、口ではそこそことは言っても、その練習量は緑間に勝るとも劣らない。


少し話したあと、黄瀬は大分お腹が空いていることに気付いた。

せっかくだし、たまにはこういうのもありかな。

そう考えた黄瀬は緑間に切り出した。

「ご飯もう食べたっスか?」

「まだだ。今から家に帰るところだからな」

「じゃ、その辺で食べないっスか?折角だし」

「…ふん。まあいいだろう」

緑間は固い表情のまま答えた。


2人は駅の地下にある店に入り、ご飯を注文した。


運ばれてくるのを待っている間、言葉が交わされる。


「あと1か月っスね」

「…ああ」

「あー、早くリベンジしたいっス」

「…」

氷の入ったコップをカラカラと回す黄瀬。その正面では緑間が腕を組んでいる。

中学時代は黄瀬と黒子と緑間はよく一緒にいたものだが、高校に来てからはこういうことはなかった。

昔はチームメイト、今はライバル。関係は変わった。


でも、変わらないものもある。


「せいぜい頑張ることだな」

「緑間っちもね」


そんな言葉を交わした時、緑間の携帯が光った。

どうやら、メールを受信したらしい。

緑間は携帯を開く。

そのとき、黄瀬はなんとなく正面の顔を見ていた。


だが。


「…え」



/


‐6‐


[ 戻る ]



BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -