あとには引かぬ‐4
「久しぶりっスね」
「ああ」
挨拶を交わす高身長の2人。
そしてその2人のそばにたつ女の子。
ちょっと見、宇宙人に連れて行かれそうな地球人に見えなくも…ない。
「今日は偵察に来たんスよ」
「ま、存分に見て行けよ」
「へえ、余裕っスね」
両者に不敵な笑みが浮かぶ。
一言二言交わして、つい、と黄瀬の目が火神の斜め後ろにいる人物をとらえた。
「あれ?この子火神っちの彼女?」
見つかった…!いや当然だけれども。
紗枝はひやりと汗をかいた。
「あ?ちげーよ。こいつはみど…」
緑間の…何だ?
そう思った火神の口が止まる。
あいつら付き合ってんだっけ?
いや違うよな。
友達なのか?
でもそれもなぜかしっくりこない。
…いやまあ、それは置いとくとしても黄瀬と緑間は中学のチームメイト同士。
ややこしいことになりそうだからあまり名前を出さない方がいいか。
「…みど?」
「あー…いや。こいつは俺のクラスメイト」
「こ、こんにちは」
「こんちは」
一般人の自分には眩しすぎるオーラを振りまく人物に声を向けられた。
紗枝の顔が緊張に染まる。
「どうも。黄瀬涼太っス」
「わ、私は柚木紗枝といいます。どうぞよろしくお願いします」
紗枝がぺこっと頭を下げると黄瀬は目をぱちくりさせた。
「へー…。火神っちにこんな友達がいるなんて意外っス」
「こんな、ってどんな?」
「礼儀正しい小動物みたいな子っスかね」
「…あなたたちから見れば大抵の女の子はちっちゃく見えると思いますけど…」
「いやいや。小さいってだけじゃなくて、目とかなんか全体的にそれっぽいじゃないっスか。ね、火神っち」
「俺に振るな。んなことより、偵察に来たんだろ?」
「あー、そうそう。じゃ、またね紗枝ちゃん」
「あ、はい。さようなら黄瀬さん」
ひらひらと手を振る紗枝を残して黄瀬と火神は連れ添って体育館に向かっていった。
「…びっくりした」
夏子に話したら羨ましがられそうだ。
紗枝はここにはいない友人の顔を思い浮かべて、それから、図書室に戻って行った。
前 / 次
‐56‐