吾木香‐2
黒子が倒れて保健室に運ばれたまま昼休みを迎えた。
「黒子くん大丈夫かなぁ」
「かなり派手に転んだからね…」
「ま、大丈夫じゃね?」
黒子の様子を案じているそのとき、紗枝の携帯のランプがメールの受信を知らせた。
「メールだ」
「なになにっ!もしかして運命男から!?」
「んー、…あ、そうだね」
確かに送り主が『緑間真太郎』となっている。
「なんて!?なんて!?」
「いくら親友でも人からのメール内容は教えられません」
「何よケチぃー!」
ばんばんと机を叩く夏子。そこに火神がパンを片手にしゃべる。
「つかまあ、予想通りだけどあいつマメそうだな」
「あ、確かに。そんな感じするね」
紗枝はメールを開きかけたが、火神の言葉に顔をあげてこたえる。
「くっそー。黒子含め3人とも知っている相手なのに私だけ知らないなんて」
「ま、まあ、そのうち会えるかもよ」
「えーいついつ!?つか、そいつどんな奴なの!?」
「緑間か?あいつはなぁ…」
と、2人の間で緑間に関する討論会が開催された。
なかなかに白熱している。紗枝が入る隙はなさそうだ。
この間に紗枝はメールを読んでしまおうと、ボタンを押した。
「なになに…」
メール内容は大体こんな感じであった。
@普段の平日は部活があるから行けない。
A学ランの男には何を言われてもついていくな。
Aの意味が分からない、と紗枝は首をかしげた。
ついていくなって、私小さい子扱いされてる…?
まあ、よく分からないけど学ランの人に気をつけよう。
紗枝はそう思って返信をした。
同じころ、所変わって秀徳高校では。
「で、真ちゃん。運命ちゃんとはどうだったんだよ?どうせ昨日会いに行ったんだろ?」
「うるさいのだよ高尾」
昼休みの間、高尾は緑間に会いに行っていた。
緑間が初めて紗枝と会った後もさんざんからかっていたのだが、今日も突っかかる気は満々らしい。
「なんだよ冷たいなぁー。ま、いいけどね」
「…高尾。間違っても変な考えは起すなよ」
「変な考えって、何のことかな〜?あ、携帯光ってるよ」
「ふん」
携帯を開いて画面を見つめる緑間を見て、高尾は表情を変える。
「…何ニヤニヤしている」
「いや、そのメール。運命ちゃんからっしょ?」
「なぜそう思う」
「えー?だってさぁ。あ、やっぱいいやこれは。やめとく」
「…」
「じゃ、俺次移動教室だから。まったね〜」
「…一体何なのだよ」
残された緑間は怪訝な顔をして高尾のあとを見送ったが、すぐに目線は携帯画面に移されたのであった。
前 / 次
‐11‐