※中途半端




足元がふらふらする。少々飲み過ぎてしまったようだ。元々酒はあまり強くないので、普段は酒の席でも付き合い程度にしか飲まない。だが今回は、本土から来た上司がいる手前、勧められたものを断る訳にもいかず、気が付けばかなりの量を摂取してしまっていた。

(――ああ、視界が回る)

はっきり言って、もう限界だった。石畳の地面が遠のき、宙に星が舞う。おぼろげな世界の中で、一瞬意識が途切れかけたとき、不意に確かな温もりが肩を掴んだ。

「ハンスっ!大丈夫!?」

やけに鮮明な声が聞こえた。崩れかけた体勢をやっと整え、振り返って発信源を見ると、跳ねた黒髪、不思議な服装、つぶらな瞳。いつもハンスの心を魅了してやまない少女がそこにいた。表情に少し焦りの色を滲ませて顔を覗き込んでくる。

「…アニー?」

アルコールで焼けた喉から発せられたのは、いつもより低く、擦れた声。喉の不快感に、思わず首元を手で押さえる。

「喉が痛いの?」

その様子を、体調が悪いと勘違いしたらしい。彼女の顔が心配そうに歪められる。薄暗い中、こちらをじっと見つめてくる瞳は、街の僅かな灯りを反射してきらきら光って、

(――可愛い、な)

勝手に腕が動いた。自分より小さな肩を引き寄せ、半ばもたれかかるように彼女の首元に顔を埋めると、ほんのり甘い香りがした。






オチは割と予測できる。


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