act.39




「というわけで、タイムカプセル埋めていいですか?」

「おーいいぞー」

承諾早いな。
ある程度穴を埋めたあと、白銀先輩と生徒会室に許可をとりにいったらあっさり承諾された。よかった。

「咲月ちゃん、タイムカプセルやるの?」

「楽しそうですね」

「ぬはは!俺も参加する〜!俺カプセルつくる!」

そう言ってぬぬっぬぬ、と変なビートを刻んでラボに消えていく翼くん。おい、許可してないぞ。いや、まぁいいんだけどさ。

「月子ちゃんと颯斗くんもやろうよ」

「いいの?」

「いいんですか?」

「もちろん」

わあ、ありがとう、と言って微笑む月子ちゃんはマジで天使だった。

「ん?どしたの一樹。そわそわして」

「や、べ、別に!」

先輩方の声に振り向く。本当だ。不知火先輩が落ち着かない様子でそわそわしている。痔かな。かわいそうに。

「白銀先輩、私、他の人達にも声掛けてきますね」

「はいはーい、頑張ってね〜」

「おいぃいぃいぃ咲月ーーーっ!!!!俺は誘ってくれないのか!!?」

「白銀先輩、誘っておいてあげてください」

「くひひ!一樹もやるー?タイムカプセル」

「やるよちくしょう!」

不知火先輩は目頭をおさえて机に突っ伏した。やれやれ。さて、私は皆を誘いにいきますかな。















ひとまず穴の様子でも見ようかな、と校庭にでると、穴付近に人が居るのがわかった。しまった、一年生とかかな。あー囲むとかしておけばよかったな、などと後悔しながら近付くと、穴付近に居たのは一年生なんかじゃなくておなじみの顔ぶれだった。

「………錫也と羊?何してんの、こんなとこで」

「あ、咲月」「やあ、咲月」

「珍しいね、錫也と羊が二人っきりでいるの。哉太は?また補習?」

と聞くと、二人は困ったように顔を見合わせてから、呆れた様子で穴の中を指差した。なんだ?なにか入ってるのか?

わずかな不安と期待の入り交じった気持ちでひょいと穴を覗き込むと、

「………………………」

穴の中で体育座りをしてしょげている不良が居りました。

…………………………………………………………………哉太?何してんの、この人。

「……………………なに、してんの」

眉間にしわを寄せて哉太に問い掛けると、哉太はガバッと顔をあげて涙目で叫んだ。

「助けてくれ!咲月!!!」

……うん、まずどうしてこうなった。錫也と羊に状況の過程を説明してもらった。
どうやら私たちがある程度埋めたと思っていた穴は、第三者から見るとそれほど埋まってなかったようだ。天文科でサッカーをやろう、ということになり、意気揚々とグラウンドに駆けおりた天文科男子たちだったが、まさか穴があるとは知らず、運悪く哉太だけ嵌まってしまったそうだ。可哀相に。ついでにこの穴、哉太曰く男子高生の自力では這い上がれないくらい深いらしい。

あれ、そういえば、他の男子は?と聞くと先生を呼びに行った…んだけど帰ってこない。と言われた。おいおい…天文科男子、一体何人で先生呼びに行ったんだよ…。多いよ。

「……ていうかさ、錫也と羊、助けてあげようとか思わなかったの」

「ああ、いずれは助けようとは思ってたよ」

「それより咲月、この穴、なんなの?」

穴の中でしくしくと泣く哉太を眺めながら、羊が聞いてきた。どうやら羊の興味のベクトルは哉太<穴らしい。

「うん、タイムカプセルやろうと思って。あ、三人もやろうよ!」

「タイムカプセルかぁ…」

「いいね。僕、何埋めようかな」

「あー、哉太とか?」

「おい!シャレにならないからやめろ!」

もうなんでもいいから早く助けてくれー!と喚く哉太を見下ろしながら、うん、それより哉太は何埋める?と聞くと穴から出てから考えたい、と返された。助けて言ってる割に冷静だなお前。

まあそのまま放置するのも可哀相だし、仕方なく三人で哉太を救出しました。やれやれ、手のかかる不良だ。







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