>> 第3章



「で、なんで府庫なんだよ楸瑛…」

「えっいや、なんとなく…」

「わからん…」

立ち話もあれだからどこか行こうのどこかがよりによって府庫かよ!

「…楸瑛さんってさあ……いや何でもない…」

「なんだよ零夜。言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだい」

「阿呆だよね」

「よっしゃ、表に出ろ」

「言えっつったのお前じゃねーか楸瑛!」

「黙っていてくれないか絳攸。私は一度零夜と決着をつけなきゃならないんだ」

「フッ、いいだろう。やってやんよ」

「な ん の だ よ !零夜も座れ!乗るな!」

「えー」

「えー、じゃない!!!ほら座れアホども!!!!」

府庫の床をダンダン!!と叩く絳攸さん。そんなことしたら昭可さんに怒られるぞ…。

「絳攸、府庫では静かにしなさい」

ほらもー、昭可さん来ちゃったじゃんか!

「っあ、す、すいません昭可様!!」

「いや、わかればいいんだよ。…おや、楸瑛殿に零夜殿じゃないか」

「お邪魔しております、昭可殿」

「こんにちは昭可さん」

相変わらず優しさを湛えた表情の昭可さん。肩に埃がかかっていてなんだか府庫の守り神っぽい。うん、なんていうか、すごく古そう。

昭可さんはあまり騒がないようにね、と私たちに告げると、奥に引っ込んでいってしまった。

若干残念そうな絳攸さんをさておいて楸瑛さんが話し始めた。

「さて、来たのはいいけど何話そうか」

「そうですねえ。楸瑛さん何かないんすか」

「…あっそうだ零夜、私たちのことは呼び捨てでいいんだよ?な、絳攸」

「え?あ、ああ、そうだな。せっかく同じ主上付きなんだし、呼び捨てでいいだろ」

「えっいいんですか!じゃあ遠慮なく楸瑛と絳攸って呼びますね」

わあ、なんか前進。よかったー。なんか仲良くなれそう。私人見知りだから怖い人たちだったら殴ってでも仲良くなろうと思ってたんだよね。

「あと、敬語も要らないんじゃないかな」

「そうだな、要らないな」

「えっ、普通でいいの!?」

「ああ、構わないよ」

「うわお、ありがとう!」

いい人たちだ!この人たちいい人たちだ!方向音痴と阿呆武官だけどいい人たちだ!

「…零夜、今なんか失礼なこと考えなかった?」

「…俺も今そんな気がした」

「嫌だな気のせいだって!!そんなことより主上を引っ張りだす方法考えるよ!」

ばばーん!と言いながら紙と筆を取り出す。苦笑と失笑の入り交じった視線を向けられたけど気にしない。

「えー、まず私の考えた第一案」

「ほお」 「言ってみろ」

「昭可さんを餌にする」

「待て。いきなり他人を巻き込むな」

「しかもよりによって昭可殿って零夜…」

「えっだめっ!?」

「だ め だ よ!何言ってんの君は!!」

「ちぇっ、じゃあ第二案ー、女装をして主上に近付く。というわけで絳攸、行け!!!!」

「何でだよ!?おかしいだろ!どっちかっていうとお前のほうが女っぽくね!!?」

「っ、んだとコラー!私は男だっつーの!」

おっと、一瞬動揺してしまった。ああああっぶねー!第二案はだめだな…やめよう。

「第三案、…戰華王を蘇生」

「は!!?だめだよ!?ていうかできないよ!?」

紙をぐしゃりと丸めて屑籠に放る。

「ったく、あー言えばこうゆう」

「………」

「………」

「………」

ぶはっ、と吹き出したのは奥にいた昭可さんだった。

「よかったね、絳攸。昭可さんに受けたよ」

「嬉しかねえよばかあ!」

「ああっ!絳攸!!!」

ネタにされた絳攸は半泣きで府庫を飛び出して行きました。

カムバック!絳攸!!(笑)








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