>> 第1章




星が好きだ。

先王に家を殲滅されて、旺季さん家で世話になっている間、夜は欠かさず星を見ていた。真っ暗闇に閃く星々は、どんな時も平等に明るく照らしてくれる。
だから18歳になって国試を受けて及第して、配属される暁には星読みを極めて仙洞省に入ろうかと考えていた。

「どうですかうーさま!私星読めてるっしょ!?極めてるっしょ!?」

「いや零夜殿…それは星読みというか」

「読めてる!?読めてる!?いよっしゃあああこれで私も仙洞令君じゃああああ!!!」

「いやそれは違うだろ」

「うわああ何だよ旺季さん居たの」

「ずっと居たわ」

「それより聞いたか旺季さーん!!私仙洞令君だっぜ!」

「違うわ阿呆。お前は少し落ち着かないか。羽羽も何か言っていいんだぞ。言わなきゃ聞かんからなこいつは」

「はぁ…いや零夜殿は元気ですな」

「元気すぎるのにも限度があるがな」

「で、旺季さん何の用でここに?うーさまとお茶するつもりなら私も入れて下さい」

私は甘露茶がいいな、と呟くと旺季さんは心底呆れたように溜め息をついた。

「馬鹿か貴様。違うわ」

「じゃあ何さ」

「…零夜、お前の配属が決まった」

「え、マジで。どこです?ていうか武官ですか文官ですか?」

「阿呆か貴様。女を武官にするわけなかろうが」

「えぇ?まあ確かに私は女ですけど男装してますし」

ていうか旺季さんトップシークレット普通に言ってるよ。やめてよ情報漏洩したらどうすんのさ。

まあ旺季さんのことだからきちんと人払いさせたうえで言ってるんだろうけど。
ちなみに私が女だと知っているのは旺季さんとうーさまと陵王さんと昭可さんぐらいだ(結構知ってるな…)
とりあえず配属教えて旺季さん。

「それで配属は」

「ああ、………主上付きだ」

………おっとお何を言っているんだこの爺さんは。そろそろボケるかと思ってたけど早くない?

「うーさま、ボケ防止に何かやってますか?」

「は、なんでまた」

「いや旺季さんすでにボケが…」

「誰がボケだとこの若造」

「うえええ、ちちち違うんですかあああああ」

「違うわ!お前が仙洞省でなく主上付きに配属されたのは紛れもない事実」

ほれ、と明確に書かれた紙を私の鼻先に押しつける旺季さん。それを受け取りながらがっくりと肩を落とした。
え、えええー。嘘でしょー…。
仙洞省に入ったら神器をこの目に焼き付けようと思っていたのに。

「よりによってなんで私が主上付き…」

紙を折々ぶつくさ呟く。ちらと旺季さんを見ると珍しく視線を泳がせていた。

「…まあその理由は霄太師から後で聞いてくれ」

「はあ…わかりました」

なんか納得いかないけどまぁいいか…。
それじゃあ失礼しまーす、と仙洞宮の戸に手を掛けたとき、うーさまが思い出したように「あ、」と声をあげた。

「なんです?」

「言いにくいのじゃが…零夜殿、星、あまり読めていませんでしたぞ」

「今頃すぎるようーさま!」


なんか涙でてきた。





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