>> 第7章



霄太師のくだらな―――おっと、理知的な作戦…まぁ所謂女の尻に敷かせて政治をやらせるという作戦は、結構とんとん拍子で進んでいるようだ。

霄太師が連れてきた皇后様は、なんとあの昭可さんの娘さんだった。昭可さんの娘さんを連れ出すとはあのじーさんもよくやるなあ、と感心しつつ、彼女に挨拶をする。

「初めまして、藤零夜です」

「初めまして、紅秀麗です」

秀麗か、いい名前だね、と笑うと秀麗はきょとんとしたあと笑顔でありがとうございます、と礼を言った。可愛いな。

その後珠翠に連れられるようにして秀麗は後宮に帰っていった。見ていたのか、珠翠が去ったのを確認してから楸瑛が声を掛けてくる。

「零夜は色男だね」

「じゃあ楸瑛は変態だね」

キイィィンッ!!!

私のレイピアと楸瑛の刃が交わる。二人とも光の速さで剣を抜いたので、一般人にはいきなり剣が現れたように見えただろう。
私達はよくこういう鍛練をする(そしてよく怒られる)

「零夜は、少し慎みを覚えるべきじゃない、かなっ!」

「楸瑛は後宮の女官に手を出すのを控えたら?珠翠が『あいつ殺す』って言ってたよ!!」

「…んなっ!し、珠翠殿はそんなこと言わない!」

「言ってたよ!隙ありッ!!!」

楸瑛を一押しすると、素早くレイピアを持ち替えて、柄で奴の頭をひっぱたく。バキッと音がしたけど…まぁいいか。気にしない。衝撃で倒れた楸瑛を見下ろす。奴は地べたに座り込んで、私を見上げていた。

「今日は私の勝ちだね」

「参ったな。ていうか超痛いんだけど」

「気のせいじゃない?後宮も近いし、君にフラれた女官たちの怨念が詰まってたのかもね」

はっはっは、と笑うと、楸瑛は今までフった女性の怨念を想像したのか、若干青ざめていた。こいつ…どんだけ常春頭だよ…。

やれやれと溜め息を吐くと、滅多に人の通らない回廊から、絳攸が出てきた。目が点になる私と楸瑛。絳攸は「やっと出れた…!!」と言わんばかりに一瞬笑顔になったあと、咳払いをして誤魔化した。いや私達しっかり見ちゃったから今更取り持っても遅いっつーの。

「なにしてんの絳攸」

「迷っ――かっ厠の帰りだ!」

そっちの回廊に厠はねぇよ…。

絳攸をジト目で見ると、「こっち見んな!」とガン飛ばされた。ははは、可愛くねえ。

楸瑛がまあまあ、と言いながら私達をなだめる。

「ところでさ、そろそろ主上の様子でも見に行かないか?」

「あ、そうだね」

「ああ、そうだな」

レイピアを柄に収めて、私達は執務室へ向かった。






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