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変態的彼




ある日、帝国学園サッカー部マネジのしがない私に…
「おい、アリア」
「はい?」

俺、お前のこと好きだから

変体が付きまとってきました。




「アリア〜!!!」
「何よ、佐久間」
12/31、言うならば大晦日。しかし我が帝国学園では、普通ならば休みであるはず部活が行われていた。
帝国学園は、孤児の子供も多く通っている。よって、親戚がいないのですることもない生徒は、部活をそれぞれで行うこともあるのだ。
私も、その一員だった。
そして、変体───佐久間も。

「あー、鬼道さんは妹さんとどっかいっちゃったし、暇だなー」
「練習しなさい」
私は彼の顔面に向けサッカーボールを放つ。
バコンと、見事に命中。
周りにいたサッカー部員から拍手が上がる。
「ムギャァッ」
蛙がつぶれるような音を出し、佐久間は倒れた。
ふん、いい気味だ。

「あ、練習続けてくださーい」
「ハイッ」
ほかの賢い部員たちは、佐久間に手を貸そうともせずに私に微笑んで、それぞれの持ち場へ走って行った。
「佐久間、あんたもよ」
「くっ・・・お前、Sかよ・・・」
「私はノーマルだ」

「...ふん、まぁいい。なんたって俺はMだからな。」
佐久間は意味深に笑い、駆けていった。
「キッモ・・・」
私がそう呟いたのは、幸か否か、聞こえなかったようだ。


「今日の練習はここまでー。各自片付けをして、帰ること」
私は、手を叩きながら号令を掛けた。もう、いつのまにやら空は真っ暗だ。流石に解散しなければまずい。
私は、部員が皆片付けを始めたのを確認し、更衣室へ向かった。このマネージャーユニ、学校のだから。他の部員のように、そのまま帰るわけにはいかない。

私は更衣室へ入り、ユニを脱ぐ。寒いけど、暖房なんて付けてる暇ないし。
「さっむ・・・」
そう、私服を手にした時だった。

カシャカシャカシャカシャッッ!!!
「え?」
振り返る。ドアの隙間から腕が乗り出していた。その手には、携帯。

「・・・。佐久間?」
私は、その褐色の肌から、人物を特定。腕の動きが止まった。私はカツカツをそちらへ歩いていく。

バキャアァァンッ

「ぐぎゃあぁ!!!」
そして、ドアに蹴りを入れた。
腕はドアと壁に挟まれ、一瞬その部位が半分くらいのサイズに圧縮される。
携帯がカシャン、と落ちた。
「 サ イ ッ テ ー 」
ボキィッ
そして、普通に折り曲がる方向と反対側にまげてやった。
二つになる、それ。
「あぁあ!!!俺の携帯!!!」
「ふん」
そこで私は、まだ何も着てなかったことに気づく。
「いい!!!?もう、まだ着替え中なんだから、入ってこないで...って、ドアこじ開けようとするな変態!!!」
私は外へ携帯を投げる。
「あぃたっ」
間抜けな音が聞こえた。私は容赦なく扉を閉め、近くにあったパイプで固定した。


(変態お断り)
(俺のアリア隠し撮り画像フォルダは無事か!?)←



「ひぃぃ・・・暗いよぉ・・・」
帰り道は予想以上に暗かった。佐久間は撒いてきたものの、いつ変態が襲ってこようと不思議ではなかった。
「速く、帰ろう」
私は足の速度を速めた。

カツ、
「・・・?」
後ろで何かの音。金属質な靴音だ。
カツ、カツ、
「だ、だれよ・・・?」
怖くなって私は駆け出す。
カツッカツッカツ、
うわ、付いてくる!!!
「ひ、」
誰?サッカー部の人ならスパイクの足音で分かるし、でもこれは・・・
私は角を曲がる。そしてすぐに、電柱の影に隠れた。

カツ、カ
足音が止まる。しかし、すぐに右往左往するように、私を捜すように歩き出す。
「ひ・・・」
カツ、カツ、カツ、
小刻みに震え、必死で息を殺す。泣き出しそうで一杯だった。
そして、しばらくして・・・

「・・・?あれ」
足音がしなくなった。
「・・・行ったかな」
私は振り返る――――


「見ーつけた」


そこには、暗くて見えないが、誰かの影が。
「ひっ――――!?」
私は叫ぶ寸前。しかし、その声に我に返ったのだった。
「アリア」
「・・・え?」
手を伸ばす。サラサラした髪が手に当たった。
「さ・・・くま?」
「お前・・・もう遅いし、心配だったから付いてってやろうとおもったのに、巻きやがって」
「・・・靴はスパイクじゃないの?」
私がそう言うと、彼は首を傾げるような仕草で
「履き替えてきた。靴擦れしてたしな。一回家帰ったんだ。そしてお前の家に電話したら出ないし、急いで探しに来た。・・・なんでスパイクだ?」
「・・・ふんっ」
私はそっぽを向く。
「あんたの所為で、すっごい怖かったんだから!!!」
「お、俺の所為!!!?す、すまん」
安心して、泣き出しそうな自分の表情を悟られたくなかった。
「あんたなんて、あんたなんて、」
「・・・もしかして、アリア泣いてる?」
でも、佐久間には通用しなかったようだ。
「ごめんな、怖かったな」
「〜〜〜――――・・・っっ」

...佐久間は私のこと、何でも知ってるんだね。
私が恐がりなのも、泣く時のクセも、私がどうやったら安心するのかも。
それを証明するように、彼は私を抱きしめる。

「・・・佐久間」
「ん。」
「今度からは、一緒に帰って」
「はいはい、了解」
「あと、着替え中に携帯で連写してくるのは止めて」
「・・・保証出来ないが、まぁ、そうしよう」
「あと・・・、」
私は小さな声で呟く。それに佐久間は、優しく微笑んだ。

「アリア、大好きだ」












「佐久間のこと、もっと教えて」
まぁ、少しくらいは
振り向いてあげないこともないじゃない



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