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君を、忘れたかった




私と君は、ずっと友達だった。君の隣があまりにも居心地がよく、私はそこから動こうとはしなかった。それは君も同じであった。自惚れではない。
私は、飲みかけのサイダーから手を放した。重力に従い、宙を一直線に墜ちていくそれは、派手にスプラッシュ音を立て墜落した。

それなのに君は、私の目の前から消えた。
唐突に、何の前振れもなく。

乾いた唇から息が漏れた。
足元をサイダーが浸食していく。酷く透明なそれは、私をさらに掻き立てた。

君はどこに行ってしまったの。
その一問を限りなく繰り返した。返答なんて、無かった。しばらくして、君は転校したと聞いた。それは君がいなくなって一ヶ月も経った時だった。

居心地のよい場所を失った私は苦悶するほか無かった。しゅわり、と爪先に染み込むサイダーが、不意に苛立ちを感じさせた。


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