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君に出逢う三秒前



『どうしてこうなった』
どうも、アリアです。現在、知らない男に抱きしめられています。ちなみにここは校舎裏です。マジ誰ですかこの人。背と顔立ち的に大人の人。え、私中学生。しかもここ学校内なう。
『あのー・・・誰ですか』
「あれ?もしかして時間軸間違った?」
『は』
さらに意味不なことをぬかすこの男の頭に一発いれて、僕はここに来た理由を思い返していた。
確か、呼び出しの手紙がきたからで。
まさか、こいつか。こいつが私を呼び出したのか。
「いや、本当は明日に来る予定だったが、失敗したらしい。俺、未来から来たんだぜ」
『死ぬの?』
首を傾げて問えば、彼は真顔で、やっぱお前昔からこんな可愛くねぇ性格なんだな、とほざいたのでとりあえずスネを蹴り上げておいた。
『で、何。てか誰。』
「痛い。スネ痛い。地味に痛い」
私は、その男をざっと見つめる。
青い、片目を隠した髪形。三白眼に大きい身長。あ、わかった。
『倉間の兄?』
「違う。俺が倉間」
『えっ』
さらに混乱する私。
『でも、倉間ってこのくらいのチビだよ?』
「言ってくれるなオイ。だから未来から来たつってんだろ」
彼ははぁ、とため息をついて、じゃあ出直してくる、と呟き片手を上げた。
「その前に、」
ちぅ
『・・・え、?』
僕は、驚きに声も出なかった。
嘘、嘘、嘘...!?私のファーストキス!?
私は、反射的に倉間(?)の肩を押した。彼はケラケラ笑いながら、スゥッと空気に馴染むように消えていった。
「はやく俺と付き合えよ」
ぼんやりと頭に響いた三秒後、地面を踏む音がして、私はゆっくりと振り向いた。
『...く、倉間...!?』
「あー...。アリア、急に呼び出して悪かった」
『は!?』
「俺、お前の事が好きだ!つ、付き合ってくれないか!」
緊張したような顔もちで言う彼。
『ねぇ...変な事聞くけどさ、...倉間、お兄さんとかいる?』
「え?いねぇけど...」
『...やばいこれマジだ』
「は?」
訳が分からないとでもいうような顔をする彼に、私はぎゅっと心臓を鷲掴みにされるような、変な感覚を覚える。
今頃、未来の彼が少しだけ、格好よくさえ思えて。
『私のファーストキス返せ!!』
「は!?」
『責任取れ!一生責任取れ!』
「お、おう!?」
泣きついた倉間の胸は、さっきの未来から来たとかいう倉間の温かさとよく似ている気がした。




君に出逢う三秒前

「倉間、あんた絶対背ぇ伸びるよ、約束する」
「え、マジ?てか何だよその確信」





---後日談的な---

『...っていうことがあったの』
「あぁ、あんときのあの反応は俺の所為だったのかよ」
『そーゆーこと。でもちゃんと責任取ってくれたからもう許す』
微笑して語る彼女の薬指には、銀色のリングが輝いていた。


(君のそんな所も好き)


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