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欲求不満


ちょっとした出来心だったんだ。いや、言い訳がましい事くらい分かってる。でもさ、せっかく付き合うまでの関係になれたのに、未だキスの一つも無しってどうよ。悲しいでしょ?
「あのー。海士?」
「んー?」
「・・・これはどういう状況でしょうか」
正面に、天井をバックに微笑する海士。言うまでもなく、私の彼氏はニコッと笑んで
「アリアを襲おうとしてる状況だよー」
どうしてこうなった。


冒頭のような悩みを持つ私が、目の前で笑む男、浜野海士の彼女になって早一年。
さすがにキスくらいしたかったりする。
そこで、いろいろと振り切れた私は不意打ちで彼の唇に自身を重ねた。
ドヤ顔してみたらそのまま押し倒された。
今に至る。(ぇ)
「海士・・・?」
「案外アリアって俺よりバカなのかも」
「それはさすがに傷つくぜ」
深刻な表情になって言った海士を小突く。
「ちゅーかなんで、キスしたの?」
なんでと来たか。
「・・・海士はしたくなかったの?」
「うん」
ちょ、冗談抜きに傷つくぜ。
私泣くぞ。マジだぜオイ。
謎の心内会議を行っていると、唇に触れていた外気が消えた。
え、嘘?なに?今のもしかしてキス?
「え、」
「はーい襲いまーす服脱いでねー」
あ、でもやっぱ脱がせたいな、とも付け足す海士に、私は漠然とした目を向ける。
「海士、どういう」
「あのさ。好きな人にキスなんてされたら、俺の理性ぶっとんじゃうわけよ。...アリア傷つけないようにって思ってたのに、もー限界」
さっきので今までの我慢が爆発した。アリア可愛すぎ。
耳元で言われて、ボコンッという効果音がお似合いか、赤くなる私。
ブラウスをはだかれ、首元を噛まれる。やばい、気持ちいい、かも。
「ちょっと今俺、理性ぷっつんしちゃってるから、歯止め効かなくなったら殴ってー」
そう、優しくキスされて、そのまま不器用に絡められて。
あぁ、私、海士にこうされたかったんだ。
私は、静かに目を閉じて、海士を優しく抱き返した。


不満



---後日談---
「昨日はごめんなさい」
「謝んないでって。腰痛いけどさ。超痛いけどさ。いや、いくら初めての私相手でも容赦なかったことに関しても全く怒ってないし、海士も初めてだったし、うん、全然マジで大丈夫だから」
「アリア、顔!顔怖い!」
「・・・ま、本当いいから。私も、初めてが海士で良かったよ」
「アリア・・・!」「抱きつくなァァ腰!腰があァァァ!!」

「・・・浜野放課後校舎裏」「えっ倉間!?なんで!?」


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