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二回目の着信


「あれ、・・・着信?」
私は、ソファーから起き上がった。
そして机に放られていた自己を主張する携帯に手をのばした。
ディスプレイには、不在一件と、新着メール一件のアイコン。
どちらも、私がマネージャーをやっている部活の後輩である、剣城くんからだった。
私は、ボタンを操作する。
「アリア先輩へ
メール気づき次第連絡下さい」
絵文字も何もない簡素な内容を読み上げると、私は剣城に折り返した。

prrr
prrr
ガチャ
「あ。もしもし剣城くん?」
「はい、こんばんは」
私は、ソファに腰掛けてどうかしたの?と短く問うた。
「・・・特に大事な用件でもないんですが、」
剣城くんらしくない震えた声に、私は少し不安を煽られた。
どうしたの、と漏らせば、すみませんと何故か謝罪された。
「剣城くん?」
「・・・俺、のこと、先輩はどう思いますか」
突拍子もない質問に、私は首を傾げる。
しかし、至って彼の声は真剣だった。
「そーだね・・・大切な後輩」
そう答えを弾き出せば、彼の唸るような声が聞こえた。
「・・それって、松風達も同じですよね」
酷く辛そうな声音だったので、私は肯定を躊躇った。
しかし嘘を吐いても仕方がないので、まぁ、と曖昧に答えた。
「先輩、外出て下さい」
途端、そう言い捨てるように言われ、私は短く声をあげた。
しかしそれを完全に無視して通話は切れた。
「外に何が、」
そう玄関を開く。そして驚愕。
そこには、携帯を片手に剣城くんが立っていたのだ。
「先輩、」
「な、何してるの!?」
すっかり冷えてしまった彼を少しでも温めようと、手を取る。しかし、逆に腕を掴まれて、力強く引かれた。
「あ、」
「・・・俺、"大切な後輩達"の中の一人じゃ我慢できません」
当然ながらもバランスを失った私は、彼のがっしりとした肩に身を預けることとなる。
そしてそのまま耳元で囁くように言われ、背筋がゾクッとした。

「先輩が好きなんです」


ジリリリリ
無機質な時計の音で飛び起きた。
「え、」
今の私には、現状況を理解するまでに時間を要した。
「ゆめ、」
なんだか妙な倦怠感に襲われ、私は目を閉じる。
そう、か。夢ね。そうだよね。
もう何もかもが面倒くさく感じ、私は机の上の自己を主張する携帯を取った。
「あれ・・・着信?」
ディスプレイには、不在一件と新着メール一件のアイコンが表示されていた。








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