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不思議の国で逢う時には、



目が覚めた。私、アリアは朝を迎えた。何と無く、外へ出たい気分だった。
私は、お気に入りの真っ白なワンピースを着て、外へ散歩へ出た。

樹海は、朝のキラキラした光に包まれていた。少し寒い。
「・・・樹海は、好きよ」
ぽろっと、独り言が漏れる。
「・・・何故かは、分からないけど」

少し歩いた所で、少女が泣いていた。
「どうしたの?」
私は声を掛ける。女の子が顔を上げた。彼女は、アイシー・・・、本名で言うなら凍地愛、だった。
「・・・どうしよう・・・」
「アイシー!?何かあったの!?」
「私、おうちに帰れないの」
彼女の兄、アイキュー・・・本名で言うなら凍地修児、もいた。
「僕たち、とても貧しいお家に住んでいて」
「口減らしに追い出されたのよ」
「この辺には怖い魔女が住んでるの。どうしよう・・・」
あぁ、なんだ、ヘンゼルとグレーテルごっこか。そう思ったが、二人は演技とはとても思えないくらい悲しそうに、泣いていた。私は戸惑う。
「え、と・・・お日様園なら、あっちだけど」
来た道を指す。すると二人は
「「ありがとう、お姉ちゃん!!!」」
と、だけ言った。私は首を傾げ、再び散歩に戻ろうと歩き出した。しかし、二人にサヨナラをしていないことに気づき、振り返る。
「え」
しかし、そこには誰もいなかった。

「マッチは、いかが?」
途中でまたもや、少女と出会った。今度はクララだ。
「え、と、クララ・・・?」
「私、ずっとここにいるの」
私の言葉を遮り、彼女は語る。
「わたしずっとここにいるの」
「マッチが売れないから、帰れないのよ」
「何回も飢えて死んだ」
「凍え死んだ時もあったわ」
俯いて、気に凭れる彼女。その瞳にはいっぱい、涙が溜まっていた。何となく私は可哀想に思えて。
「・・・マッチ、いくらなの??」
「・・・1クローネ」
私はポッケを探る。丁度1クローネ入っていた。私はマッチを買う。
「ありがとう、ありがとう...これで、私、家に...帰れるわ」
ポロポロと涙をこぼしながら、切れ切れに噤んだ。私は、マッチを一本擦った。ポゥ、と儚い光がともる。これがもし「マッチ売りの少女」なら、事故で亡くした兄に、カノンお兄ちゃんに、会えるんじゃないか。
しかし、兄の姿は映ることも知らない様子で、マッチは十秒程で限界に達した。
「・・・駄目か」
私は顔を上げる。・・・クララの姿がない。
「・・・あれ」
私は、マッチの箱を握りしめて、再び散歩へ戻っていった。


しばらく行くと、白い鳥が倒れていた。
「あら、」
私は駆け寄る。すると、白鳥はたちまち人の姿になった。私はもう驚かなかった。
「こんどは、・・・涼野」
「・・・。」
彼は虚ろな目で、私を見た。
「私にキスしてくれ」
彼は人間に戻りたい、と、虚ろな目のまま懇願した。悪魔に魔法を掛けられ、白鳥になってしまい、愛する姫にも見つけてもらえず、猟師に追われ...
「私に、キスをしてくれ」
「いいわ、」
私は簡単に許した。不思議な夜だ。お兄ちゃんが見たら、涼野は三秒程で焼き鳥にでも変化を遂げるだろう。
キスをして、目を開けると、そこには誰もいなかった。

しばらく歩くと、兎にあった。コートの様な、チョッキの様な服を着て、二本足で歩いている。
「?」
「やぁ、僕はヒロト((「失礼します」((「ぃぎゃあぁ!!!?」
私はそれを踏みつぶし、進んでいく。爽やかな気分だった。

しばらくして、宮殿的な所についた。私はそこへ通される。
「あ、アリア様」
「ご苦労様です」
赤髪のチュ−リッ・・・いや、剛毛な髪型に金目な男と、白髪と頬に傷跡が入った、青に近い翡翠色の瞳をした、私の一番大事なチームメイト二人がいた。・・・それも、召使いの衣装に身を包み。
「・・・」
「奥で王子が」
「お待ちです」
二人は優雅に礼をする。
「・・・コスプレ??」
私の一言も優雅に無視し、私を奥へと促した。

待っていたのは、私が一番会いたかった人物だった。
「――――!!!」
「やぁ、お疲れ様。我が、妹よ」
「――――っ、・・・?あれ・・?」
あれ?このひと、だれだっけ?
私は振り返る。赤髪と白髪の、召使いが二人。
だれ?
ねぇ、たしか、・・・?あれ・・・
「分からないかい?」
奥に腰かけた"誰か"が声を出す。
「こんな衣装も宮殿も、見なくていい」
ボォッ!
城が燃え始めた。私は虚ろにそれを見つめていた。
「一番大切な物が」
「見えておりますか??」

ハッ、と我に返ると、そこは樹海だった。私の近くの木が燃えていた。私は急いで沈下させる。
私は、握りしめていたマッチを視界の隅に入れた。もしかして、この炎・・私が付けたの?
グシャリ
私は箱を潰した。中身は空だった。

私は、手紙が落ちているのを発見した。
「・・・?」
カサリ
それを解き、読む。
" To 愛しい妹
ハンプティ・ダンプティが塀から落ちた時
誰にも元に戻せなかったのは、"
手紙はそこで終わっていた。
いや、続きがあったのだろうが、そこから先は燃えてしまっていた。
「それは・・・」
"壊れた物は絶対に、そして永遠に、元に戻る事なんて
無いからだよ"




はっと目が覚めると、そこは自室のベッドの上。
「・・・?」
私は一瞬放心状態になるが、次の瞬間には、全ての状況が飲み込めていた。
「・・・はぁ、夢か」
私は起きあがり、クローゼットを開く。
「あ、今日は練習なかったな・・・何しようかな」
私は何と無く、外へ出たい気分だった。私は、何時も通りお気に入りの真っ白なワンピースを着て、外へ出た。

「樹海は、好きよ」

何故かは、分からないけど。





end.


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